なにわTube【2023年2月14日】感想文

今回のなにわTube動画は前回の旅の続きということで、前回の動画の感想文で予想した通り、冒頭・締めのあいさつがありませんでした。

ということで、今回は発音面ではなくもう少し別の面から冒頭・締めのあいさつに見られる特徴を挙げてみようと思います。


冒頭・締めのあいさつ

このページの冒頭でも書いた通り、今回は冒頭・締めのあいさつがなく、発音の面であいさつに関して特にコメントすることがないので、その代わりとして、これまでの動画のデータに基づいて、冒頭・締めのあいさつに見られる傾向をまとめてみます。

一般論(これまでの動画に見られるパターン)として、なにわTube動画では、冒頭あいさつに比べて締めのあいさつが省略されやすいという傾向があります。

例えば、なにわ男子チャンネルの動画のみに絞って考えたとして、2023年2月14日時点でアップされている74本の動画のうち、冒頭あいさつがあった回は55回(出現率74%)なのに対し、締めのあいさつがあった回は35回(出現率47%)で、締めのあいさつの方が出現回数が少なくなっています。

また、単純な出現回数に差があるだけでなく、冒頭と締めのあいさつの間には出現に関して一定の依存関係があります。

各動画において、「冒頭あいさつがあったかどうか」と、「締めのあいさつがあったかどうか」という点から組み合わせを考えてみると、「冒頭あいさつも締めのあいさつもある」、「冒頭あいさつはあるが締めのあいさつはない」、「冒頭あいさつはないが締めのあいさつはある」、「冒頭あいさつも締めのあいさつもない」という4通りの組み合わせがあり得ます。

これらのパターンの数を数えて表にしてみると、以下のような分布になります(行と列のトータルはあえて付けていませんが、それも加えると統計分析に詳しい人にとってはおなじみの「2×2のクロス表」になりますね)。

この表については様々な角度から分析ができますが、「冒頭あいさつがあるときの締めのあいさつの出現率」と「冒頭あいさつがないときの締めのあいさつの出現率」いう観点では、前者が62%(34 ÷ 55 = 0.618…)なのに対し、後者は11%(2 ÷ 19 = 0.105…)となり、締めのあいさつの出現率は冒頭あいさつの有無によって大きく変わる(つまり、片方の「あり・なし」が分かるともう片方の「あり・なし」に関してある程度の予測が可能になる関係である)ことが分かります。

締め:あり締め:なし
冒頭:あり3421
冒頭:なし217
冒頭あいさつと締めのあいさつの出現頻度に関するクロス表

言語学における「有標性」的な言い方をするならば、「締めのあいさつの存在は冒頭あいさつの存在を含意する(締めのあいさつがあれば冒頭あいさつもあるが、冒頭あいさつがあるからといって締めのあいさつがあるとは限らない)」という表現もできるかもしれません。

有標性というのは、(発音面で言うなら、)言語音には一定の序列があり、基本的で簡単な音から複雑で難しい音まで様々なレベルのものがあるという考え方で、基本的で簡単なものを「無標」、複雑で難しいものを「有標」と呼びます。

無標な音は基本的で簡単であるがゆえに世界中の言語で頻繁に使われ、幼児が獲得する時期も早いのに対し、有標な音はその逆で限られた言語の中にしか出てこないし、幼児が獲得する時期も遅くなる傾向があります。

言い方を変えると、有標な音の存在は無標な音の存在を含意する(幼児の音韻獲得で言えば、有標な音を獲得している幼児は、それよりも無標な音を獲得できていると言えるが、無標な音を獲得できているからといって有標な音を獲得できているとは限らない)ということになり、これが言語音における含意の法則などと呼ばれたりすることもあります。

有標性については、以下のページでもう少し具体的な説明をしているので、必要に応じてご覧ください。

用語解説:有標性

言語学において有標性というのは重要な概念の一つなわけですが、なにわTube動画の冒頭・締めのあいさつの出現パターンに「有標性」っぽい関係が見られるということはなかなか興味深いと思っています。


参考文献・出典

今回は音声について引用したりはしていませんが、下記の動画に関する感想文となっています。

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