今回のなにわTube動画はメンバー同士で良いところを褒め合う(最後の方は暴露)という内容でした。
ジャニーズJr.チャンネル時代にもお互いのクセを暴露するというような動画がありましたが、デビュー後1年経った今でもその当時と変わらず仲の良い雰囲気なのが印象的でした。
一方、以前と変わったところという点では、東京での活動が多くなった影響なのか、全体に関西弁が標準語の影響を受けてきているなと感じます。
標準語の影響と言っても、単に語彙的なことだけでなく、アクセントが関西弁でも標準語でもない中間的なパターンで出てきているなどパターンは様々ですが、音声学をやっている人間としてはやはり音声(アクセント)の面が気になるところです。
さて、今回も動画を見ていて思ったことを適当に書いていきたいと思います。
今回は冒頭・締めのあいさつ共に省略なくすべて出現していて、しかも最近変異型が観察されていた「どうも~」等も標準的なパターンという、極めて平和な回でした。
変わった発音が出てくるのも興味深いところではありますが、やっぱり平和っていいですね。
褒められた内容を見て、西畑くんが「髪の毛関係多くね?」「これちょっと俺じゃなくね?」という風に発言していました。
「多くない?」「俺じゃなくない?」のような表現の「ない」が「ね」に変化し(※ai → e(ː)は音声学的には自然な変化です)、発話末にかけて平板型のトーンでさらに上昇調で終わるようなパターンは、若年層(個人的なイメージでは東京などの標準語の話者)の間ではよく見られる表現ですが、「多くない?」は関西であれば「多ない?」、「俺じゃなくね?」は「俺じゃないやん」とか「俺とちゃうやん」等の表現を使うというイメージがあります(最近の関西の若年層と接する機会がないので、関西圏の若者が「多ない?」のような表現をもう使わなくなっているのかは分かりませんが・・・)。
西畑くんに関しては、「多ない?」のような表現を使うというイメージはありますが、以前(デビュー前など)に「・・・くね?」というような表現を使っているイメージは無かったので、東京に行って影響を受けたのかな、などと思いながら見ていました。
実際には、こちらが見落としているだけで以前から西畑くんが「・・・くね?」という表現を多用していたということもあり得るので、「・・・くね?」の使用頻度に関する分析を新たな研究テーマにしてみるのも面白いかなと思いました(来年度なにわ男子の発音を分析をするゼミを持つので、テーマが決まらない学生がいたらこれを薦めてみようかと)。
長尾くんの発言の中に出てきた「アメちゃん」(※アメは飴)ですが、音声学者がアメと聞くと、アクセントの例題としての雨と飴が真っ先に思い浮かびます。
標準語(関東)では雨は「あめ」(高低)、飴は「あめ」(低高)。
関西弁では雨は「あめ」(低高)、飴は「あめ」(高高)。
以上のように関東と関西で雨と飴のアクセントは異なっていて、特に標準語の人にとって関西弁の雨と飴のパターンは聞き分けが難しいのです(標準語では最初が低いか高いかの違いはあまり重要な要素ではないため)。
授業の中でアクセントの話をする際には、例として↑の例を出し、クラスの中に関西の人がいたらお手本として実際に発音してもらったりもするんですが、ある時、関西出身の学生に「キャンディーのアメはどう発音しますか?」と聞いたら、「そもそもキャンディーは「アメ」ではなく「アメちゃん」です。「アメちゃん」としか言いません」という答えが返ってきて、びっくりした記憶があります。
長尾くんの発言を聞いて、↑のようなことを思い出しつつやっぱり「アメちゃん」なんだなと、しみじみ思った次第です。
その他
どうでもいい話ですが、デビュー前(ジャニーズJr.チャンネル時代)には「ダサい」(2021年5月25日動画3分59秒付近)と言われていた藤原氏が、今回の動画で「最近おしゃれ」と言われていたのがツボでした。
本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。