なにわTube【2023年5月16日】感想文

今回は家族大喜利の後編ということで、前回と同様、メンバーの家族からの個性的な回答が炸裂していました(普段より動画がアップロードされるタイミングが遅めでしたが、西畑くんのTwitterライブでの情報によると、機材関連のトラブルだったそうですね。5月16日中にアップロードされて良かったです)。

普段の動画よりも会話多めの尺長めということで、主に発音面に注目しながら視聴している管理人にとっても気になるところがいっぱい出てきたので、いつものようにいくつかピックアップしていきます。


冒頭・締めのあいさつ

今回の動画は前回からの続きということなので、これまでのパターンと同様に冒頭あいさつは無しで締めのあいさつのみ出てくるというパターンで、締めのあいさつについても普段通りな感じでこれまでと大きく異なる点は無かったように思います。

発音面では取り立てて言うべき点はないということになりますが、大喜利の中で第2問目で冒頭あいさつを題材にした設問「西畑大吾がYouTube冒頭の挨拶で『ちゅきちゅき』にひと言足してしまい全然かわいくない言葉になってしまいました。何を足した?」が出てきていましたね。

普段めったに取り上げられることがない冒頭あいさつにスポットライトが当たったこともあり、個人的にはかなりテンションが上がりました。


アクセントのゆれ?

管理人が関心を持っている研究テーマの一つに「言語における音変化が生じる過程とメカニズムを明らかにすること」があります。

こういったテーマでは、同じ方言でも高年層と若年層の間でどのような発音の違いが生じているか、みたいな感じであるグループとあるグループの間の比較をしていくのが一般的ですが、グループという大きな単位ではなくもっと細かい個人レベルで分析しないと見えてこないことがあるみたいな指摘があったりもするので、個人的に「同一話者内での発音のゆれ」があると食いついてしまいがちです。

前回の感想文でもメンバーの発音に生じているアクセントのゆれ(単なるいい間違いの可能性もありますが)を取り上げましたが、今回もそういう例が出てきたので取り上げたいと思います。

5分15秒付近・5分20秒付近:テクニック

藤原氏の発言の中で「テクニック」という単語が出てきましたが、1回目と2回目でアクセントが異なっていました。

例を以下に示していますが、1回目の方は「ニック」(中高型:クが高くそれ以外が低い)、2回目の方は「クニック」(頭高型:テが高くそれ以外が低い)という音調になっています。

テクニック①

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日5分15秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

テクニック②

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日5分20秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

東京方言等での標準的なアクセントでは頭高型の「クニック」(年配の方だと「「クニック」もあるかも)が普通で、『全国アクセント辞典』(平山輝男編)によると関西(京都なので大阪は違うかもしれませんが、とりあえず同じだと仮定して話を進めます)の方言でも「クニック」と記述されているので、仮になにわ感担当の藤原氏が関西の言い方を忠実に守っているとしても東京に染まったとしても「クニック」(2回目の方)となるはずです。

となると、1回目の「ニック」はいったいどこから出てきたのか?という話になりますが、可能性としては (1) 藤原氏の地元ではそのようなアクセントで発音されている、(2) ただ単純に言い間違っただけとか、・・・あたりでしょうかね?

16分5秒付近:いいね

前回の動画に関する感想文の中で、長尾くんと西畑くんで「いいね」のアクセントが異なっていた点について触れて、長尾くんは関西のパターンだみたいなことを書きましたが、今回の動画では長尾くんの発音が東京のパターンになっていましたね(具体的には、前回は「いい」、今回は「いね」)。

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日16分5秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

ただそれだけの話で何か深い話に繋がるということも全くないですが、個人的に長尾くんは関西弁が強いイメージがあるので、舞台挨拶のようなフォーマルな場面でもなければ緊張するような場面(=一般に、標準語モードに切り替わりやすい状況)でもないのに関西弁ではなくなっているのがちょっと意外な感じがしました。

19分32秒付近:お母さん

「テクニック」のところでおそらく関西弁由来ではないアクセントパターンが出てきたので、そのつながりでもう一つ。

上述の『全国アクセント辞典』によると、「お母さん」は東京でも関西でも同じパターン(「か」が高い:あさん)であるとのことですが、大橋くんの発言の中に出てきた「お母さん」のアクセントが平板化してなかなかすごいことになっていました。

若者言葉は平板化したものが多いなどと言われることもありますが、最近の若者はこういう発音に変化しているのでしょうかね?

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日19分32秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

子音の無声化

なにわTube動画の中では、声帯振動の有無(有声・無声)に関する音変化がしばしば起こります(録音環境(マイクとの距離が遠くて子音の音が充分に拾われないなど)が原因かもしれません)。

有声⇔無声の変化は微妙なものも多く、これらは音声学の訓練を受けたことのある人でないとなかなか気づかないかもしれませんが、kとgを例にとると、「少しgっぽくなっているk」とか、「かなりgっぽいがまだk」「kとgの中間くらいに聞こえるg」など、中間的な音が無数に存在します。

こういった中間的な音は音響分析などの客観的指標を使わないとなかなか分かりにくいものですが、今回は変化しているのがかなりはっきりわかる例が出てきたので取り上げてみることにします。

ちなみに、有声・無声や声帯振動の有無といった子音の分類に関する音声学的な用語については用語解説のページ(子音の分類)で説明しているので、もう少し知りたいという方はそちらをご参照ください。

11分56秒付近:B

西畑くんが設問の選択肢の「B」について述べているところで、発音がほとんど「P」のように聞こえます(ちなみに、別のところで西畑くんが発音した「B」は普通に「B」に聞こえるので、個人的な発音のクセというわけではないですね)。

Pに聞こえるB

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日11分56秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

ちゃんとBに聞こえるB

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日16分19秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

似たような感じで、「どっち」の「ど」が「と」っぽく聞こえるパターンも出てきていました。

以下の例では「どっち」の発音が2回出てきていますが、1回目よりも2回目の「どっち」の方がより「とっち」に近く聞こえるような印象を受けましたが、皆さんにはどう聞こえるでしょうか?。

やや「とっち」っぽい「どっち」

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月16日0分40秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

なぜこういった変化が起こるのかについては音声学的な観点から説明が可能なのですが、様々な要因が絡んでくるうえに色々な音声学的な用語の解説もしながら説明しなければならないので、それについてはまたの機会に。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

アクセントに関する文献

平山輝男(編)(1960)『全国アクセント辞典』東京堂出版.

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