今回の動画はメンバーがクリスマスのデート服を披露しつつデートプランを発表するという内容でした。
対象となったのはメンバー7人のうち3人(大橋くん、高橋くん、西畑くん)で、残りのメンバーは次回以降になるようです。
この日はちょうどとある大学で担当している音声学の講義の開始日で、その授業でちょうど複合語アクセントの話をしたので、今回はそれに関連する部分に焦点を当てて取り上げたいと思います。
今回は冒頭・締めのあいさつともされていました。
冒頭あいさつは普段よりも発話時間が極めて長くなっていた印象ですが、今回特有の事情(企画の関係でデート服発表までは服装を隠しておかなければならず、腕を動かしてちゅきちゅきポーズができないなど、普段とは異なる状況に対する戸惑いがあった、等々)によるものかと思われます。
また、今回のように動画が1回で完結せずに次回に続くような場合には締めのあいさつがないことが普通ですが、今回は次回以降に続くという振りがあったにもかかわらず締めのあいさつがあり、これはなにわTubeとしてはかなりレアなパターンです。
日本語は「高さアクセント」である(音の高低によってアクセントをつける)ことが特徴で、単語ごとに特定の音調が決まっています。
単語と単語が組み合わさって(※単語と単語の間に助詞等が入ることもしばしばあります)句や文などの大きな単位が構成されていく際、基本的には単語ごとのアクセントがそのまま維持されますが、単語と単語が組み合わさって「複合語」になると、組み合わさる前の個々の単語が持っていたアクセントとは異なる音調パターンになることが多いです。
今回のなにわTube動画内に出てきた表現を例に、以下でそれぞれの単語単独で発音した時のアクセントと、単語が組み合わさって通常の句になったときのアクセント、また、複合語になったときのアクセントのパターンを示してみます(高いトーンを●で、低いトーンを○で表すことにします。また、助詞や活用語尾等は三角形で表すこととし、高いトーンの助詞は▲、低いトーンの助詞は△と表記します)。
なお、ここでのアクセントは東京方言等の標準的なパターンを想定し、アクセント型は『NHK日本語発音アクセント辞典』を参照しています(掲載されていない語については管理人の内省によります)。
単語1 | 単語2 | 単語1+単語2 | |
通常の句 | クリスマス(の) (○●●○○(△)) | コーデ (●○○) | クリスマスのコーデ (○●●○○△●○○) |
複合語 | クリスマス (○●●○○) | コーデ (●○○) | クリスマスコーデ (○●●●●●○○) |
同様に、他にもいくつか例を示してみます。
単語1 | 単語2 | 単語1+単語2 | |
通常の句 | デート(の) (●○○(△)) | プラン (●○○) | デートのプラン (●○○△●○○) |
複合語 | デート (●○○) | プラン (●○○) | デートプラン (●●●●○○) (人によっては○●●●○○) |
単語1 | 単語2 | 単語1+単語2 | |
通常の句 | 無責任(な) (○●○○○(△)) | ヒーロー (●○○○) | 無責任なヒーロー (○●○○○△●○○○) |
複合語 | 無責任 (○●○○○) | ヒーロー (●○○○) | 無責任ヒーロー (○●●●●●○○○) |
これらの例から分かるように、複合語になると最初低く始まって(デートプランのように、条件(最初の音節構造)次第では高く始まることもあります)最後から2~3目あたりで低くなるというのが複合語の典型的なパターンとなります。
今回の動画内では、こうした複合語アクセントの例として他にも
「デート(●○○)+服(○●)→ デート服(●●●○○、人によっては○●●○○)」(1分15秒付近)
「カップル(●○○○)+シート(●○○)→ カップルシート(○●●●●○○)」(4分40秒付近)
「夜(●○)+ご飯(●○○)→ 夜ご飯(○●●○○)」(5分51秒付近)
「クリスマス(○●●○○)+デート(●○○)+コーデ(●○○)→ クリスマスデートコーデ(○●●●●●●●●○○)」(1分4秒付近)
・・・etc.
のようなものが出てきていました。
日本語の標準的なアクセントの分析においては、音の下がり目(高いトーンから低いトーンに切り替わる部分)の位置が重要とされていて(この下がり目のことを「アクセント核」と言います)、1つの単語につくアクセント核の数は最大で1つまでというのが原則となっています(※「アメリカ」(○●●●)のようにアクセント核がない(=平板型の)単語もあります)。
上の例にあった「クリスマスデートコーデ」で言うと、「クリス’マス」も「デ’ート」も「コ’ーデ」(’はアクセント核の位置を示しています)もすべてアクセント核がある単語であり、これらの語を単純に足し合わせるとアクセント核の数は3つになるはずですが、合体して一つの単語(複合語)になったことで、1つの単語につきアクセント核の数は最大1つというルールに合わせる形で「クリスマスコ’ーデ」(アクセント核の数は1つ)となったと解釈することができます。
こういったパターンは今回の動画に限らず日常会話の中に頻繁に出てくるので、音声学を勉強している人(または興味を持っている人)はテレビやラジオ、YouTube動画等を視聴する際に意識してみると色々と楽しめると思います。
本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。