なにわTube【2023年10月31日】感想文

今回は北海道アポなし旅の第6回目となる動画で、次の目的地(石狩ひつじ牧場)に到着するまでの車内~牧場での活動に関する内容でした。

今回も音声学的に見て興味深いトピックが色々出てきていたので、その中からいくつか取り上げてみようかと思います。


冒頭・締めのあいさつ

今回も前回と同じで冒頭・締めのあいさつがありませんでしたが、動画の中で目的地に予約の電話を入れるときに大橋くんが「どうも!なにわ男子です!」と発言する場面があったので、これに関連して2点ほど言及しておきたいと思います。

1点目は「どうも」の部分の発音についてです。

今回の大橋君が発音した「どうも」は、普段のなにわTube動画の(西畑くんが冒頭で発音する)「どうも」に比べると「も」が比較的長く、しかもやや誇張して書けば[oʊ]のように最後に向かって音色が変化していく、2重母音的な発音になっていました(実際の例を以下に示します)。

大橋くんによる「どうも」

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年10月31日1分48秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

同じ「どうも」でも、メンバーによってアクセントや母音の実現の仕方が違うなど個性が出るという点は面白いと感じます。

2点目は、この冒頭あいさつの表記の仕方についてです。

冒頭あいさつは、毎回発音の仕方に揺れがあって、「どうも」の部分だけとっても「ども」「どーも」「どーもー」など、様々なパターンが存在します。

どの言い方を基本と見なすのか、また、伸ばす音が入る場合、「どうも」「どーも」「ど~も」などの複数の表し方ができるので、そのうちどれを選択するかというのはかなり難しい問題です。

なにわ男子関連のYouTube動画の概要欄には「どうも、なにわ男子です」的な内容が書かれていることがあるので、その表記がいわゆる「公式」の表記になりそうなものですが、概要欄の表記ですら揺れまくっていてこの問題をより複雑にしてくれています。

これは以前に学会発表をする際に非常に悩んだ点でもありまして、当時ジャニーズJr.チャンネル(※名称は当時)となにわ男子チャンネルの動画の概要欄の記載を調べた際には以下のような複数のパターンが確認されました(「!」が全角か半角か、数が1つか2つかなどの細かい点も含めると実際にはもっと細かいバリエーションが生じますが、ここではその点は無視することとします)。

これらはすべてが同じ頻度で出てくるというわけではなく、出現頻度には偏りがあるのですが、ともかく公式のチャンネル内ですら表記が必ずしも安定していないという点は理解してもらえるかと思います。

  • どうも!なにわ男子で〜す!!
  • どうも!なにわ男子です!!
  • どうも〜ちゅきちゅき!なにわ男子です!!
  • ちゅきちゅき!どうも!なにわ男子です!!
  • どうも〜なにわ男子です!
  • ちゅきちゅき!どうも、なにわ男子です!
  • ちゅきちゅき!なにわ男子です!!
  • ちゅきちゅき~!なにわ男子です!
  • ちゅきちゅき~!どうも、なにわ男子です!

出現頻度を見ると、なにわ男子単独のチャンネルになってからは「どうも」については「どうも~」という表記となることが多く、「なにわ男子です」の部分は実際の発音では「でーす」と伸びていても「なにわ男子です!」(!は全角で1つ)が最も多いので、「どうも~なにわ男子です!」が最も公式見解的なものに近いのかなと思い、学会発表の際にもその表記を採用したのですが、今回の動画のテロップを見て愕然としました。

なにわTube動画 2023年10月31日1分48秒より

公式チャンネル内でも表記が揺れているので、どれが絶対的に正しいということもないのだと思いますが、このテロップの表記に関しては以下の2つの理由からその妥当性にやや疑問があります。

まずは、今回の大橋君の「どうも」は上述の通り2重母音的になっていて通常の(西畑くんが発音する)「どうも」よりも長く伸びているような印象を受けるので、「どうも~」の方が聴覚印象に近い可能性(※絶対的にこれが正しい・間違っているという話ではないので、あくまで可能性です)があるという点。

もう1つは、過去のなにわ男子関連のYouTube動画の概要欄における表記の出現頻度の問題で、今回のテロップのように「!」が「どうも」の後に1つ、「なにわ男子です」の後に1つ付いて「どうも!なにわ男子です!」という表記で出てくる例は、旧ジャニーズJr.チャンネルを含めてほとんどない(管理人が把握している中では1回だけ)ため、それほど正当性が高い表記ではないという点です。

・・・と色々書いてきましたが、正直まあどうでもいいことなんですけどね。

なお、なにわ男子単独のチャンネルになってからは比較的安定してきて、2022年10月11日から現在までは「ちゅきちゅき~!なにわ男子です!」という記載がずっと続いています(※一部若干の例外あり)。


調音点の同化

「だんだん似せましょう」というモノマネのゲームの中で、何度も「アンパンマン」という発音が出てきていました。

「アンパンマン」の中に何度も出てくる「ん」は、「撥音」(はつおん)と呼ばれるタイプの音で、後ろに来る音によって発音が変化します(日本人は通常気づいていませんが、後ろに来る音によって無意識に「ん」の発音を変えています)。

「ん」の発音の変化は「同化」という現象の一種で、音の変化のパターンには厳格なルール(詳しく知りたい人は下記の用語解説のページをご覧ください)があるので、通常はどのような音で出てくるかが予測可能ですが、発話の最後(「アンパンマンね」「アンパンマンから」など、「アンパンマン」の後ろに何か別の語が付く場合は除外し、「僕、アンパンマン!」のように「アンパンマン」で文が終了するような状況)に来る「ん」だけは予測が付かない面があります。

「ん」に様々な発音のバリエーションがあるとは言っても、日本人にとってはすべて同じ「ん」に聞こえてしまうので、通常は音の変化に気付くのは難しいのですが、今回の動画の中で出てきた「アンパンマ」の発音のうち、最後の「ン」の発音の際にメンバーの口がどのような動きをしているかを見ると、実際に単語の最後の「ん」が様々な音で出てきていることが分かります。

例えば、道枝くん(6分40秒付近)の場合は「ン」の瞬間に口が閉じていない状態で、舌の位置も下がった状態(=両唇や歯茎ではなく、口の奥の方で音が作られていることを示唆する状態)となっているのに対し、長尾くん(6分58秒付近)や藤原氏(7分22秒付近)、大西くん(複数回発音していますが、7分42秒付近の方)、大橋くん(7分47秒付近)の場合は「ン」の瞬間に両唇が完全に閉じた状態(上下の唇によって音が作られる=両唇音)になっていることが、(音では区別できなくても)目で見て把握することができます。

ちなみに、「アンパンマン」の中に含まれる「ン」のうち、最後の「ン」以外の「ン」(アマン)については、後ろに来る音がpやmなど両唇音なので、すべて両唇鼻音の [m] で発音されます。

これについては日本語の発音規則として決まっているので、メンバーの誰が発音しても「ン」の瞬間に両唇が閉じる動作が行われているはずです。

音声学に関心がある人は、こういった観点から今回の動画を見てみると違った面白さを発見できるのではないかと思います。

[参考] 「ん」の音の変化のパターンは、同化に関する用語解説のページにまとめていますので、必要に応じてご参照ください。

用語解説:同化

参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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