なにわTube【2023年11月7日】感想文

今回は北海道アポなし旅の7回目ということで、前回の羊牧場を出発してから小樽までの場面でした。

いつものように音声学的な観点から気になった点を取り上げてみたいと思います。


冒頭・締めのあいさつ

今回も前回同様、冒頭・締めのあいさつともありませんでした。

次回予告によると次回が最終回のようで、次回は締めのあいさつは出てきてくれそうなので楽しみに待ちたいと思います。


逆さ言葉

3分20秒付近:ルタオ⇔おたる

小樽の名物という話の流れでチーズケーキが話題なった際、「ルタオ」(お店のウェブサイトによると、アルファベットだとLeTAOと書くようですね)というお店の名前が出てきました。

この「ルタオ」に関して、大西くんが「ルタオ」という名前は「小樽(おたる)」を逆から読んで付けられたのではないか?という指摘をしていて、それが事実かどうかはさておき、「小樽を逆にするとルタオになる」という感覚は多くの日本人にとって共通のものだろうと思います。

なにわTube動画 2023年11月7日3分28秒付近より

ただし、「小樽の逆がルタオ」という感覚は日本語の特徴に基づいたものなので、日本語以外の言語を母語とする人も同じ感覚を持つとは限りません。

例えば、文字表記の際に子音・母音を分けて書く表記(アルファベットなど)が基本となる言語であれば、小樽(otaru)の反対はuratoとなり、逆に、ルタオ(rutao)の反対はoaturのようにならなければおかしいと言うかもしれません。

実際、「ルタオ」という発音を逆再生すると、oaturのような発音になります(※逆再生すると、かな文字を逆にするのとは異なり、子音・母音の順番が逆(アルファベットで書いて逆から読んだような感じ)になります。この点については逆再生に関する解説ページを設けているので、興味がある方はそちらをご覧ください)。

大西くんと藤原氏による「ルタオ」

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年11月7日3分20秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

上の音声を逆再生したもの(音としてはoaturのような感じ)

また、漢字表記を基本とする(漢字一文字に1音節が割り当てられる)中国語などであれば、「小樽」を反対にすると「樽小」となるのではないかと思います。

ちょうど、チーズケーキの話題が出たときにリーダーこと大橋くんがぼそっと「たるお」と言っているように聞こえたのですが(下記にその音声を示します。管理人の効き間違いかもしれませんが・・・)、これはまさに漢字を逆にした場合の「逆さ」の感覚に近いと言えますね。

大橋くんがルタオのことを「たるお」と言った(と思われる)音声

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年11月7日3分17秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

↑の音声から「たるお」の部分だけ抜き出したもの

さて、話を日本語に戻すと、日本語にも子音・母音はありますが、文字表記の際にはかな文字が使われる点が日本語の特徴で、単語を「逆さ」にする際にはこのかな文字を単位にして逆に並べるというのが日本語における一般的な「逆さ言葉」の作り方になります。

このかな文字ですが、子音+母音のまとまり(「na」、「ni」、「wa」など)に対して一つの文字(「な」、「に」、「わ」など)があてがわれる(あ行については母音だけですが、それ以外は「ん」などの特殊拍と呼ばれるものを除くとすべて子音+母音の構造です)ので、かな文字を単位として「逆さ」にすると、アルファベット(子音・母音がバラバラの状態)や漢字(かな文字よりもさらにたくさんの子音・母音から構成される場合がある)を逆さにしたのとは違った音の並びが出来上がります。

ちょっと余談ですが・・・
昔、「上から読んでも山本山、下から読んでも山本山」みたいなCMがありましたが、これは漢字を単位に逆さにしているものです。漢字を学んで知っている人であれば、漢字を単位にして逆さに読んだときの話だと理解できると思いますが、まだ漢字を知らないが日本語を母語とする幼稚園・小学生などあれば、「やまもとやま」の反対は「まやともまや」じゃないの?という感覚を持つかもしれません。また、海外の人からしたら、yamamotoyamaの逆はamayotomamayのようになるはずで、日本人の感覚は理解できない!ということになるでしょうね。

この「かな文字」が基本単位という感覚は、日本語のモーラ(または拍)という概念を反映していて、日本語特有の感覚とも呼べるものです。

他の言語と比べたときの日本語の特徴と言うと、「子音や母音が少ない(だから日本人は英語の発音が苦手だ)」みたいな感じの話がされがちですが、日本語には他の言語には無い特徴というのも数多くあります。

音声学・音韻論的な概念を勉強すればするほど、そういった日本語の特徴や素晴らしさなどが分かるようになるので、そういった観点からも音声学に興味を持ってくれる人が増えると良いなと思っています。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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