なにわTube【2023年5月30日】感想文

今回の動画は顔写真を合成して「平均顔」を作れるアプリを使って遊ぶ(?)という内容でした。

いつも通り、音声面で気になった点を挙げてみます。


冒頭あいさつ・締めのあいさつ

今回は冒頭・締めともに普通にあいさつが出現しました。

全員で言う部分でセリフをきちんと言っていないメンバーもいますが、それも含めて平常運転な感じの印象でした。


異形態

なにわTube動画のテロップは実際の発音にかなり忠実に記述されることが多い印象ですが、そうはいってもやはりテロップと発音のずれが生じることが起こり得ます(※メンバーの発言をすべてテロップで出すわけではないし、細かい部分の発音がはっきりしない場合もあったりもするので、発言内容とテロップの間にずれが生じるのは当たり前ではあるのですが、ここで言う「ずれ」というのは、テロップとして表示されていて発音も明瞭に聞こえているのにずれているようなケースのことを言っています)。

今回は異形態の存在が原因ではないかと思われるケースがあったので取り上げてみます。

12分17秒前後:3にんくらい/ぐらい

長尾くんが出題者となった問題に関して、メンバーからの質問に答える中で出てきた部分です。

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年5月30日12分17秒付近)

発音上は「3人ぐらい」と明らかに「ぐ(gu)」で言っているのに対し、テロップでは「3人くらい」と「く(ku)」で表記されています。

当該部分のテロップの表示(なにわTube動画 2023年5月30日12分17秒付近)

実は最近の動画(例:2023年5月9日動画など)でも「ぐらい/くらい」のずれは複数回出てきていたりするので、今回たまたまということでもなさそうです。

このサイトでは、文字表記上には出ないような極めて細かいレベルの話(息の量が多いkと息の量が少ないkなど)を取り上げることがよくありますが、そういったものとは異なり、kとgは明らかに別カテゴリーの音で、「カラス/ガラス」、「クラブ/グラブ」、「好き/杉」、「吐く/ハグ」、・・・のようにkとgを取り違えると全く別単語になってしまうほどの大きな変化が起こります。

このように、本来であれば「ぐらい → くらい」(または「くらい → ぐらい」)という変化が起これば明らかに違和感が生じるはずですが、テロップを付けた人は何らかの理由で「くらい」と「ぐらい」の間にそれほど違和感を覚えなかったのだと考えられます。

その理由を考える中で管理人が思いついたのは、「異形態」の存在です。

物を数えるときの「本」は、一本(いっぽん)、二本(にほん)、三本(さんぼん)、・・・のように場合によって「ぽん」「ほん」「ぼん」のように複数の発音で読まれますが、こういった異なる音価のことを異形態と呼びます(「ほん」「ぼん」「ぽん」が「本」の異形態であることなります)。

他にも匹(いっぴき、にひき、さんびき、・・・)や階(いっかい、にかい、さんがい、・・・)、雨(あめふり、あまがさ)など、異形態を持つ形態素は日本語の中に数多く存在します。

その言語の話者が異形態を発音する際、通常は音の変化をまったく意識しない(言われてみると「ぽん」「ほん」「ぼん」が違う音であることははっきり分かるが、普通に「一本、二本、三本、・・・」と発音するときに「本」の発音が異なるから注意して読まなければ・・・などと考えながら発音することはない)というのが異形態に付随する特徴です。

言い方を変えると、「同じ形態素に属する異形態に対しては、発音の違いに鈍感になり、異なる音であっても混同を起こしてしまいがち」ということです。

「くらい/ぐらい」も、少なくとも現代の日本語においては一つの形態素(「位」?)の異形態という位置づけになっていて(どちらを使うかは地域差や個人差がありそうですが・・・)、どちらでも違和感なく受け入れられる状況になっていると思われるので、テロップを入力した人は「ぐらい」と「くらい」を混同してしまい、日頃自分が使っている異形態の方を無意識に入力したという解釈ができるかもしれません。

もちろん、言語学的な要因とは全く関係こと(例えば、ジャニーズ事務所の規定でテロップでの「ぐらい」は認められていない、など)が理由である可能性もありますが、ともかく上記のようなことを考えながら今回の動画を見ていました。

異形態については用語解説のページを設けていますので、必要に応じてご参照ください。

用語解説:形態素・異形態

参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA