なにわTube【2022年10月18日】感想文

今回の動画では冒頭と締めのあいさつに普段とは違う面が色々とあったほか、その他色々と音声学・音韻論に関係する話題が出てきていました。

以下、いくつか取り上げてみます。


冒頭・締めのあいさつ

0分31秒付近:「どうも」に異変?

今回の動画の冒頭・締めのあいさつは普段と結構違う点が多かったです。

表面的なところで言うと、普段よりも「せーの」「ちゅきちゅきー」「どうも」「なにわ男子です」の切れ目がはっきりしていた(よくあるのは「ちゅきちゅきー」の最後と「どうも」の開始が重なってしまってはっきりしないパターンで、こうなると分析しにくいので、切れ目がはっきりしているのは分析する立場からするとありがたい)とか、最後の「以上」を西畑くんではなく道枝くんが言っている(※誰が言うかをルーレットで決めたことによる)というような点が挙げられるかと思います。

ただ、個人的により気になった点は、「どうも」のアクセント・イントネーションが通常と異なる点です(具体的な違いについては音声の例を示しながら以下で説明します)。

これまでの西畑くんによる「どうも」の典型的なパターンは、ずっと高い音調で続くパターンか「どう」の部分で軽く上昇し「も」で完全に高くなるパターンが大半で、下降調(普通に「どうも」と話すとき(例:「どうもありがとう」というときの「うも」のような高・低・低の音調)で発音されることは基本的にありませんでした。

ずっと高い音調の例(2021年8月24日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください
「どう」で上昇し「も」で高い音調の例(2022年5月31日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください

例外は2021年12月28日の動画の「どうも」ですが、これはロケ先での周囲への配慮によりあまり大声を出せない状況で発せられたものであり、声のトーンそのものも抑えられています(※このパターンが出てきたのはデビュー前(ジャニーズJr.チャンネル時代)のYouTube動画も含め、管理人が知る限り1回のみです。なお、これは「西畑くんがなにわTube動画の冒頭あいさつとして発音したどうも」に限った話です。)。

上記の例外の例(2021年12月28日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください

その他、テンションが上がりすぎたのか疑問文のイントネーションのように上昇し続けていくパターンもあります(管理人が知る限り過去に1件のみです)が、下降調ではないという点では典型的なパターンに属します。

上昇し続けていく例(2022年4月12日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください

最近現れ始めた二重母音的に発音される「どうも」(新型どうもと呼んでいたタイプ)についても、アクセント・イントネーションという点では下降調ではなく、やはりこれまでと同じパターンとなっています。

新型どうもの例(2022年8月2日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください

さて、それに対して、今回の動画の「どうも」は声のトーンを押さえるべき理由も見当たらない条件下で下降調で発音されているという点で、これまでにないパターンであると言えます。

今回の「どうも」(2022年10月18日のなにわTube動画より) ※再生時は音量にご注意ください

「下降調」というのがぱっと聞いた時の印象でしたが、その後音声をじっくり聞いてみると、単なる下降調というだけではなく、「どう」でやや下がった後、「も」は声帯の振動が不安定になったのかはっきり発音されずに終わってしまっている(部屋の残響が強いのではっきり聞こえなくなったのか、そもそも言っていないのかは判断しにくい)ようです。

発音する際も、息を貯めて発音している感じだったので、意図的にこのようにしたのでしょうかね?

次回以降の「どうも」にも注目したいところです。


オノマトペの強調形

4分16秒付近・14分21秒付近:「モミモミ」と「カッサカサ」

動画の中で、「隣の人をモミモミする」や「口がカッサカサになる」のような感じでオノマトペが出てきていましたが、ここにも音韻論に関する話が絡んでいます。

日本語を母語とする人なら、「カッサカサ」は「カサカサ」が強調された形であるという認識を持っていると思います。

でも、「モミモミ」については「モッミモミ」のような強調形はあまり一般的ではありません(無理すれば言えますが、「カサカサ – カッサカサ」と比べると言いにくさや違和感を感じるはずです)。

他の単語を見てみると、促音(小さい「ッ」)を入れて強調形にした時に自然なものと不自然なものがあることに気づきます。

強調形に違和感なし強調形に違和感あり
バタバタ – バッタバタポヨポヨ – ポッヨポヨ
サクサク – サックサクサラサラ – サッラサラ
コテコテ – コッテコテグネグネ – グッネグネ
タプタプ – タップタプザワザワ – ザッワザワ

なぜこのような違いが生じるのでしょうか?

この理由は、音声学における子音の分類を知っていると理解することができます。

音声学では、声帯振動の有無(子音の発音中に声帯が振動するかどうか)、調音点(口腔内のどこで狭めが作られるか)、調音法(狭めの程度がどのくらいか)によって子音を分類しますが、そうした分類に基づくグループに「阻害音」と「共鳴音」というものがあります。

子音の分類方法についてはそのうち用語解説のページを設けようと思っていますが、とりあえず阻害音はp, b, t, d, k, g, s, z, h, tʃなどの音、共鳴音はm, n, r, w, yのような音を指します。

上で見た違和感を感じる・感じないの違いは、阻害音・共鳴音の分類と関係していて、促音(小さい「っ」)の後ろに阻害音が来るという音の並びは伝統的な日本語の単語の中にも普通に出てきますが、促音の後に共鳴音が来るパターンはほぼ存在しません。

促音は原則として阻害音の前にしか生じないので、カッサカサのように後ろに阻害音であるsが来る形はまったく違和感がないのに対し、「モッミモミ」のように後ろに共鳴音であるmが来るパターンは言いにくさを感じたり違和感が生じるのです。


他にもアクセントや子音・母音の発音などで気になる点は多々ありましたが、今回はこの辺で終わりにしておきます。


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