なにわTube【2022年8月30日】感想文

なにわTubeの2022年8月30日の動画は、全国ツアーの合間に広島で撮影されたものでした。

そのうち福岡の動画もアップされるといいなと思いつつ見ていましたが、今回もやはりいろいろと気になる発音が出てきていました。

動画で出てきた時系列に沿って全部挙げるとだらだら長くなるので、今回もその中からテーマ別にピックアップして紹介しようと思います。


冒頭のあいさつ

普段は西畑くんが「せーの」や「どうも」のパートを担当しているところですが、今回は長尾くんが当該部分を担当していました(長尾くんが「どうも」を言うのは、なにわ男子単独チャンネルになってからは今回が初となります)。

管理人は長尾くん推しなので嬉しいという思いがある半面、毎週冒頭あいさつの分析をしている身としては発言者が変わってしまうとデータとして使えなくなってしまうという問題もあり、なんとも悩ましいところです。

最近は「どーも」が従来型と新型のどちらで出て来るのかを毎週観察するような感じになりつつありますが、長尾くんの「どーも」は典型的な従来型でした(西畑くん以外で新型どーもを発音する人はこれまでに出てきていないはずです)。

それから、最近の冒頭あいさつ(7人全員で声を揃えて言う部分)はデビューから時間が経ち慣れが出てきてしまっているからか、発音がだれてしまうことが多かったですが、普段のスタジオではなく広島での撮影ということもあってか、テンション高めで比較的声も揃っていたかなという印象でした。


母音の無声化(が起こるはずのところで起こらない)

母音の無声化についてはほぼ毎回出て来ていますが、何度も繰り返し出てくることによって知識が定着するという面もあるかと思い、今回も挙げています(一応、このサイトは音声学に興味がある人向けに日常に潜む音声学・音韻論的な現象を紹介し、それを通して音声学の関心・理解を深めてもらうことを目的としています)。

「母音の無声化」とは言っても、通常であれば無声化が起こるはずのところでなぜか起こらないというパターンについての話です(母音の無声化に関する基礎的な説明については用語解説のページにありますので必要に応じてご参照ください)。

11分37秒付近:ソーセージミックス

このサイトで繰り返し書いてきていることですが、なにわ男子の発音には母音の無声化するはずのところで無声化が起こらないことがよく、今回の動画の中にも大量にそれが出てきていました。

無声化には複数の要因が関与するため、同一の話者が同一の単語を発音したとしても、発話の条件によって無声化が起きたり起きなかったりしますが、今回は高橋くんがたまたま同じ単語(「ミックス」)を無声化なし・無声化ありの2パターンで発音していたので、それを例に挙げてみます。

まずは無声化していない「ミックス」(mikkusu)から(他のメンバーの声が被さっていてやや分かりにくいかもしれませんが・・・)。

無声化していない「ミックス」(なにわTube動画 2022年8月30日11分37秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

次は無声化している「ミックス」(発音上mikksのようになっているもの)です。

無声化が起きている「ミックス」(なにわTube動画 2022年8月30日11分58秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

一つ目は mikkusu で二つ目は mikks のようになっていますが、違いが分かるでしょうか?

人によって感じ方は様々ですが、無声化が起きると、母音が消えた分を補完しようとして子音が長くなるので、kやsの存在感がよりました感じに聞こえるかもしれません。

日本人は母音がなく子音だけの状態の音を聞いた場合でも母音(いわゆる「幻の母音」というやつ)があると感じてしまうので、無声化していてもしていなくても同じに聞こえてしまって区別できないという人も多いかと思いますが、耳を訓練すれば違いが分かるようになります。

聞き分けができるようになりたい人は、ぜひこの高橋くんの発音を何度も聞いて、無声化しているとき・していないときの特徴をつかんでください。

その他の例

「ミックス」だけでは物足りないという人向けに、今回の動画に出ていた通常無声化する環境で無声化していない発音を挙げてみると、「来てます」(0分30秒付近);「満喫」(1分20秒/20分00~05秒付近)などがあります。

気になる方はぜひ確認してみてください。


hの脱落

hというのは特殊な音で、音が脱落してしまいやすいという特徴があります。

このhの脱落という現象は、日本語に限らず英語や韓国語など様々な言語で観察されます(hの脱落については、日本人が英語を聞き取る際に問題になりやすいポイントでもあるので、いずれ用語解説で詳しく紹介したいと思っています)。

今回の動画に限らず、hの脱落は頻繁に発生している現象ではあるのですが、今回はわりと目立っていたというか、もしかするとネタでやっているのかな?と思えるような場面があったので取り上げてみることにします。

4分20秒付近:大足(おおあし)くん

動画の中で「広島の良いところ」をお題として古今東西ゲームをする場面で、回答の順番を長尾くんが指定している場面での発言です。

まず、メンバーの名前の呼ぶ際に「大吾くん」→「流星くん」→「大橋くん」→「みっちー」→「高橋くん」→「丈くん」のように下の名前で呼ばれるメンバーと苗字で呼ばれるメンバーがいるという点にも興味をそそられますが、それ以上に、「大橋くん」のことをこっそり「大足くん」とディスっていたのが個人的には面白かったです。

ディスり現場の証拠(なにわTube動画 2022年8月30日4分20秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

高橋くんのことを「恭平くん」と呼ばずあえて「高橋くん」と苗字呼びしていたのも、大橋くんだけ苗字で読んだらそこが目立ってしまい「大足」と発言したのがばれやすくなってしまうので、それを防ぐための作戦だったのではないかとも勘繰りたくなってしまいますね。

7分00秒付近:再び大足呼ばわり

大橋くんを大足と呼んでもばれなかったのに味を占めたのか、長尾くんによる大足呼ばわりは続きます。

お好み焼き屋さんでの企画の中でも「大足」が炸裂していました。

再び「大足くん」(なにわTube動画 2022年8月30日7分00秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

12分08秒付近:大足いじりに乗っかるじょー

その後、長尾くんによる大足いじりに気づいたと思われる藤原氏も大足ネタに乗っかってきていました。

藤原氏による「大足」(なにわTube動画 2022年8月30日12分08秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

・・・と、ふざけて書いてきましたが、大橋(oohaʃi)が大足(ooaʃi)のようにhが取れてしまうのは非常にありふれた現象で、hが語中(単語の先頭ではない位置)にある場合、ある程度のスピードで発音するとhが弱化してほとんど聞こえなくなってしまいます。

もちろん、ゆっくり丁寧に読めば語中だろうとhは落ちませんが、話すスピードが速くなってくると、hの音をはっきり言おうとする方がかえって難しいくらいになってきます。

聞き手の側も、hが落ちやすいのは分かっているので、発音上hの音が消えてしまっても、頭の中で(無意識に)補完してしまい、音が消えていることに気づきません(この点で、母音の無声化とも近いと言えます)。

ということで、大橋くんに限らず、hが入っている名前であれば西畑くんでも高橋くんでもhが取れた状態で発音されてしまう現象が頻繁に生じるので、音声学の観点から言えば長尾くんが意図的にリーダーだけをディスろうとしたのではないことは明白ではあるのですが、本当に意図的にやっていたらネタとして面白いな、と思って動画を見ていました。


変わったアクセント

15分44秒付近:平板型の「スタイル」

「スタイル」という単語は、東京方言をはじめとする一般的な方言では中高型で「イル」(※下線が付いている部分が低いトーン、下線無しの太字が高いトーン)と読まれるのが普通です。

関西方言では高起式になるか低起式になるかは分かりませんが、とにかく「」が高く「」で低くなる起伏式で読まれるのではないかと思うのですが・・・。

当該部分の音声(なにわTube動画 2022年8月30日15分44秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください

単語のなじみ度が高くなってくると、もともとのアクセントが平板型ではなかった語が平板化するという現象が(特に若い世代では)観察されるので、この「スタイル」の平板化はもしかすると関西の若年層に特有の現象なのでしょうか?

もしくは、なにわ男子のメンバー全体に焦って慌てるとアクセントがおかしくなりがちな傾向があるので、クイズで正解がばれそうになって焦って発言したのでアクセントが通常とは異なる形になったのでしょうかね。

ともかく、管理人自身の方言では中高型で発音するため、ちょっと違和感があったので取り上げてみました。


その他

18分30秒付近:語呂とモーラ数

高橋くんが「うどんとそばの字の語呂どっちが好き?」という質問をした場面で、答えを考えている長尾くんに対して藤原氏が「2文字か3文字か?」と発言する箇所がありました。

藤原氏自身がそこまで深く考えて発言したのかどうかは分かりませんが、音声学者としては非常に考えさせられました。

2文字か3文字かというのは、2モーラ(拍)か3モーラかという意図だと思われますが、そもそも語呂とモーラ数って関係あるのだろうか?と。

語呂の良し悪しには、音声学・音韻論的なレベルだけに絞っても、使われている子音や母音、音節構造、アクセント型、語の長さなど複数の要因が考えられそうですが、その中にあって語の長さ(モーラ数)は語呂の良し悪しにどの程度影響する要因なのでしょうか?

これは実験をしてみたらとても面白そうなので、夏休みの自由研究とか、卒論のテーマとかが決まっていない人などはやってみると良いのではないかな、と思いました。

その他、口蓋化がばっちり生じている例などもありましたが、長くなりすぎたので割愛します。


参考文献・出典

本文中の音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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