2022年9月6日の動画は8月30日の動画からの続きで広島での旅の動画でした。
これまでも、続き物の動画の場合には冒頭のあいさつ(どうも、なにわ男子です)や最後のあいさつ(以上、なにわ男子でした)が無かったので、次回以降も(広島の動画が続く間は)もあいさつが無い回が続きそうで、あいさつの分析をしている立場からするとちょっと残念です。
今回は車や路面電車での移動の場面がほとんどだったこともあり、普段以上に周囲の雑音が大きく細かい発音を云々するには向かない感じでしたが、発音以外にも気になる点がいくつかあったので今回はそれらを挙げてみます。
「観葉植物飼い始めた話」は、2022年上半期のニュースをメンバーが順番に言っていく(ただし、後に行くほど話題性が低いニュースを言わなければならない)という動画内の企画の中で、一番最初に出てきた表現ですが、個人的には話題性が高いかどうかよりも植物に対して「飼う」という表現が使われていることが印象的でした。
自分の中では「飼う」というのは生き物に対して使うもので、植物には「育てる」あたりが普通かなという感覚があり、『新明解国語辞典(第四版)』では「動物にえさを与える(て養う)」、その他いくつか辞典を見てもやはり「動物」に対して使うという記述があるので、これがいわゆる「伝統的」な用法のようです。
ただ、その後長尾くんも「サボテンを飼ってて」のような表現をしていて、やはり動物以外のものに「飼う」を使用しているので、西畑くんだけが変わった使い方をしているわけではないようです。
ペットを人間のように扱う人がいるのと同じく、植物を生き物と見なして扱う人がいてもおかしくはない(長尾くんの場合、そのサボテンに名前を付けて育てているとのことなので、ペットと同格扱いしていることが伺われる)ので、植物を生き物と見なして「飼う」という動詞を使うことについては比較的自然な気がしますが、なにわ男子のメンバーくらいの若い世代でそのようにしている人が多いということなんでしょうか?
それとも、関西弁では無生物を生物扱いしやすい傾向があるからなんでしょうか?(例:飴のことを「飴ちゃん」のようにちゃん付けして言ったり、ビリケンさんを見ることを「ビリケンさんに会う」のように言ったりとか、擬人化が多いような気がしないでもないので)
自分は音声以外のことは専門外ということもあり、はっきりした理由はよくわかりませんが、方言差や世代差は非常に面白い研究対象になるので、興味がある人は卒論等で調べてみてもいいかもしれませんね。
(※ちなみに、管理人は言語学者なので、言語は変化していくものだという考えであり、「絶対的に正しい日本語」のようなものがあるとはそもそも考えていません。今回の話題も、「飼う」の使い方が間違っている/いないという議論をするつもりははそもそもないので、誤解なきよう。)
長尾くんの初主演映画『HOMESTAY(ホームステイ)』の撮影場所が広島ということで、移動中の車内で長尾くんが撮影当時の話をしている際に西畑くんが発した一言です。
「広島で撮ってるんやね」ではなく、「広島っていう所で撮ってるんやね」となっている点が個人的には非常に気になりました。
自分の感覚だと、「っていう所で」が入ると、広島のことを知らない人が発したセリフのように聞こえるので、少なくとも広島に来て今現在ロケをしている人の発言としてはとても不思議な印象を受けます。
編集でカットされたようですが、西畑くんによるこの発言を聞いた直後に大西君がニヤニヤしていたのもセリフに違和感を感じたためではないかと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?
路面電車に乗って移動する場面で、藤原氏が発した一言ですが、「列車」という単語が出てきたのが印象に残りました。
自分の中では「列車」というと、「列」という字が入っているせいか、何となく車両が複数連なっている電車等を想像してしまうので、一両編成の路面電車に対して「列車」と言っている点に少し違和感があったのです。
ただ、「列車」の定義についてwebで色々検索してみたところでは、「列車」だからと言って必ずしも複数の車両から成る必要はないようです(語源については専門外なので正直よくわかりません)。
ということで、藤原氏の「列車」の使い方は特に問題ないようです。
原爆ドームを見たメンバーの発言で、道枝くんが「小学生の時オレここ行った」のように「行く」を使って表現したのに対し、直後に藤原氏が「修学旅行で来た」のように「来る」を使って表現していました。
「行く」と「来る」のどちらを使うかは話し手の捉え方による部分が大きいので、どちらが正しいとか間違っているとか言う話ではないですが、短い時間の間で「行く」と「来る」が使われていたので興味深いなと思って見ていました(「行く」の場合、自分がいる場所から別の場所に移動するイメージになるので、道枝くんとしては「当時大阪にいた自分」を起点に考えて原爆ドームに移動したという捉え方になり、「来る」の場合は何かが自分の方に向かって移動してくるイメージになるので、「現在広島の原爆ドームにいる自分」を中心に考えたとき、昔の自分が大阪から(今自分がいる)原爆ドームに向かって移動した、というような捉え方になるでしょうか)。
ちなみに、「行く」と「来る」に関連する話題として、英語だとgoとcomeがありますが、日本人は「go=行く」、「come=来る」と一対一の対応だととらえている人が多いと思います。
だいたいそれでうまくいくのですが、英語と日本語では物事の捉え方が完全に同じというわけではないので、日本語では「行く」という場合でも英語ではcomeを使うのが普通、といったケースも出てくるので注意が必要です(興味がある人は、ネットでgoとcomeの使い方を検索すると色々と説明しているページが出てくるはずなので、調べてみると良いでしょう)。
西畑くんは「スタッフ」と発音する際に「フ」を唇歯音(f)で発音しがちですが、今回も「スタッフさん」と発言する場面があったので注目してみました。
また、その直前に「服屋さん」とやはり「フ」の音を含む単語を言っていたので、そちらも合わせて見てみました(ちなみに、これまでの観察では、「スタッフ」以外の単語で唇歯音fで発音することはあまりない印象)。
正直、YouTubeの録音状況を考えると、音だけで唇歯音の [ f ](←英語等で出て来る発音)と両唇音の [ ɸ ](←日本語の「フ」の一般的な実現形)を聞き分けるのは不可能ですが、両方とも視覚的に判別しやすい音なので、口元の映像を見れば判断が付きます。
ということで当該部分の口元を見てみましたが、今回は「スタッフ」の「フ」も服屋の「フ」もはっきりとした唇歯音で発音されているという兆候は見られませんでした(カメラの角度の問題で微妙ではあるものの、これまでに観察されていたような明らかに上の歯と下唇で調音しようとする動作はなさそうな感じでした)。
どういう状況で唇歯音が出やすいのか、今後も注目して見ていきたいと思っています。
本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。