2022年8月16日のなにわTube動画は1年半ぶりの企画会議ということでしたが、今回も音声学的・言語学的に色々と面白い内容(中には、卒論のテーマが決まっていない学生に勧めてもいいかなというようなものも)が出てきていました。
いつものように、管理人が気になった点を動画の時系列順に並べてみます。
今回の冒頭のあいさつにおける西畑くんの「どうも~」は従来型ではなく新型でした。
8月に入って急に新型が出始めてきましたが、このまま置き換わりが進んでいくのでしょうか?
ちなみに、「どうも~」の新型・従来型について気になった方は以前の感想文をご参照ください(下にリンクをつけておきます)。
なにわTube【2022年8月2日】感想文:母音の無声化ほか西畑君がメンバーに前回の企画会議を覚えているかと問いかけた場面です。
テロップでは「みなさん覚えてますか」と書かれていますが、音声を聞いた感じだと「みなさん覚えてまっか」のように、関西弁風(もうかりまっか的なパターン)に聞こえるような気がします。
これについては、ちょうど「ますか」の「す」は無声化(←毎回のように話題に出てきますね)が起こる環境なので、母音のuが取れて「maska」のようになり、子音連続の前半要素となったsが促音化したようなパターンなのかな、と思って聞いていました。
が、本当はきちんとsが発音されているのに、録音やその他音質の問題(YouTubeではよくありがちなやつ)のせいではっきり聞こえなかっただけなのかもしれないと思い、念のため音響分析もしてみました。
結果的には、「みなさん」のsについては波形上はっきりと摩擦のノイズが表れていましたが、それと比べると「ますか」のsについてははっきりとしたsの痕跡が表れていませんでした。
ただ、完全に「まっか」のような発音になっている(全くsらしい要素がない)のかというと、必ずしもそうは言えなくて、sの発音が緩んではっきりとは発音されていないが、完全に消えたわけでもないといったような感じで確信をもって結論を出すことはできませんでした(防音室で高性能のマイクで録音しているわけではないため、周囲の雑音やBGM、残響等々で波形が見にくいのはYouTubeにありがちなことで、これは致し方ないところです)。
みなさんは「覚えてますか」と「覚えてまっか」のどちらに聞こえたでしょうか?
長尾くんが自分の考えた企画について話をしているところです。
音声学というよりは言語学の別の分野になりそうですが、「カタカナ+ひらがな表記」の際にどこまでをカタカナで書くかという点で興味深いと思って見ていました。
この少し前の(3分30秒付近)のテロップでは「バレたら」のように「バレ」がカタカナ、「たら」がひらがな表記になっていますが、長尾くん自身が書いたのは「バレタら」となっていました。
管理人の感覚だと、「ばれる」は語幹「ばれ」に活用語尾の「る」が付く形なので、語幹(←音声学以外のことはさっぱりなので用語が違うかもしれませんが)をカタカナにしてそれ以降をひらがなにするのがしっくりくるのですが、最近だと「ワロタ」のように語幹以外の部分までカタカナで書く表記が増えているような気もするので、若者の間で新しく使われている型なのかもしれません(そうだとすれば、さすがグループ最年少といったところでしょうか)。
脱線しますが、「ワロタ」に関しては「ワロタ」も「わろた」も自然な気がするのに、「ワロた」はおかしいような気がするのはなぜなんでしょうね?(こう感じるのは管理人だけ?)
「カタカナ+ひらがな」での表現の自然さがどのように決まっているのか、卒論のテーマが決まっていない人は調べてみても面白いかもしれませんよ。
こちらも長尾くんが自身のアイディアについて話をしているところです。
「が」の位置が長尾くん自身がパネルに書いたのと画面にテロップで入っているのと違っていたので気になった人も多いのではないかと思います。
管理人としてはどちらが正解でどちらが間違いとか言いたいわけではなく、この2つの文って意味変わってくるかな?とずっと考えこんでしまいました、という話です。
統語構造とか意味関係が若干違っていそうな気はしますが、管理人は統語論や意味論は分からないので気になっただけで終わってしまいました。
長尾くんの渾身の一発ギャグです。
ここで議論したいのは一発ギャグとしての評価ではなく、その前フリになっていた「那須川天心」のアクセント型です。
単語がくっついて複合語になると、単語を単独で読んだ場合とは異なるアクセント型になるのが一般的です。
例えば、「料理(りょうり)」(※太字が高いピッチ、下線の部分が低いピッチを表します)と「学校(がっこう)」が合わさると、「料理学校」は「りょうりがっこう」のように「が」まで高くてその後下がる形となり、「りょうりがっこう」のように料理と学校のアクセントのパターンをそのまま足した形にはなりません。
これが複合語アクセントの典型的なパターンですが、名前(姓・名)を読むときは複合語アクセントのようには読まれず、姓と名で単独で読んだ時のアクセント型がそれぞれ保持されます。
高橋恭平くんを例にしてみると、姓・名単独ではそれぞれ「たかはし」と「きょうへい」で、姓・名を合わせて読むときもそれを組み合わせて「たかはしきょうへい」読むことになります(複合語アクセントのパターンと同じであれば「たかはしきょうへい」となりますが、このアクセントだと明らかにおかしく聞こえます。ちなみに、複合語アクセントのパターンに関して、「りょうりがっこう」は最初の「りょ」が高いのに、「たかはしきょうへい」は最初の「た」が低いんだ?と思ったあなた、音声学・言語学の素質があるかもしれません。これにはきちんとした理由があるんですが、いくつか前提となる概念を理解していないといけないのでここでは省略しています。)。
前置きが長くなりましたが、那須川天心選手のアクセント型を考えてみると、姓・名はそれぞれ以下のようになります(※以降のアクセント型の表記は東京方言等のいわゆる標準的なパターンに基づいていますが、方言によっては異なるアクセント型になる場合ももちろんあります。自分の方言ではどのようになるかを考えてみるのも楽しいと思います)。
- 那須川・・・なすかわ
- 天心・・・てんしん
姓・名の場合はこの2つを組み合わせるだけなので、通常であれば「なすかわてんしん」となるのですが、長尾くんの一発ギャグの中では「なすかわてんしん」のように複合語アクセントのパターンで発音されていました(長尾くんの方言では「なすかわ」単独でのアクセントが「なすかわ」で、そのせいでそうなったという可能性もありますが、一発ギャグの方の「那須川前進」のアクセントを聞く限りでは長尾くんの「那須川」単独のアクセントは「なすかわ」で間違いありませんので、この可能性は否定できます)。
ところで、姓・名が複合語アクセントのパターンになってしまうのは、外国人の名前であれば見られます。
例えば、ボブ・サップは単独では「ボブ」と「サップ」ですが、繋げて読むと「ボブサップ」とはならず「ボブサップ」となりますし、ハリー・ポッターは単独では「ハリー」と「ポッター」ですが、繋げて読むと「ハリーポッター」ではなく「ハリーポッター」のようになります。
もしかすると長尾くんの中では那須川天心選手は外国人なのかもしれません。
・・・というのは冗談で、「那須川天心選手」と「選手」まで含めたアクセントのパターンを見てみると、長尾くんは「なすかわてんしんせんしゅ」のように発音していて、本来のパターンである「なすかわてんしんせんしゅ」とはなっていませんでした。
通常、「〇〇せんしゅ」は〇〇の部分で下がり目がある場合、「せんしゅ」の「せ」は低いままになります(一つのまとまりの中で一度ピッチが下がったらその後は二度と上がらないという日本語アクセントのルールで、downstepとかcatathesisのような名称が付いています)。
これは日本人でも外国人でも一緒で、「ボブサップ選手」は「ボブサップせんしゅ」であり、「ボブサップせんしゅ」とはなりません。
以上のことを総合すると、単に一発ギャグを振られて焦っていたのでアクセント型の処理がこんがらがってしまい、通常とは違ったパターンなっただけのことかと思われます。
大橋くんが一発ギャグを振られて「でも、あの、ちょっと1回は・・・」と話し始めた部分です。
最初は「でも」の発音が「でむ」に聞こえたなあ、と思っただけのことだったのですが、その後色々考えていたら「でも」ではなく「で、まあ」というつもりだったのかな?とか、テロップが無い箇所なのでそれで悩んでしまいました。
音的には [demə] のように英語のあいまい母音っぽい音になっていたので、ある意味どうとでも聞こえてしまいます。
みなさんには何と聞こえるでしょうか?
したくない企画を尋ねられて長尾くんが回答したところです。
「げきから」の「き」のiは前後を無声子音kに挟まれているので通常であれば無声化するところですが、長尾君の発音では無声化せずにiがはっきり発音されていました。
発音的にはやや「げぎから」もしくは「げぎがら」っぽい感じに聞こえるような気もしますが、これは本来であればiがないところにiがあることで、無声化していないということは、iの前後にあるのは無声子音ではないはずだ(➡kによく似た無声子音ではない音ということはgかもしれない)という音韻知識による推測が無意識に働いてしまうからだと思われます。