なにわTube【2024年1月23日】感想文

今回の動画はメンバー7人の新年会ということで、動画のサムネ画像にも書かれているとおり「ただただ喋って食べるだけ」の動画でした。

今回も音声学的になかなか興味深い発音が色々と出てきていたので取り上げてみたいと思います。


冒頭・締めのあいさつ

今回は冒頭あいさつが無く、締めのあいさつのみとなっていました。

冒頭あいさつがないのは2024年に入ってから初となります(ちなみに、1月2日、1月9日、1月16日と3連続で冒頭・締めのあいさつともにある回が続いていました)。

2023年の1月は冒頭・締めのあいさつが欠ける回が無く、2024年の1月も同じようになるかなと思っていたところだったので、ちょっと残念ではあります。


聞き間違い

15分14秒付近:製麺所 → 洗面所

なにわTube動画 2024年1月23日15分11秒付近より

冷蔵庫に何が入っているかという話の流れから、大橋くんが生麺が好きだから製麺所で麺を注文しているという話題になったとき、「製麺所」と聞いて長尾くんが「洗面所?」と聞いているシーンがありました。

「製麺所」(大橋くんによる発音)と「洗面所」(長尾くんによる発音)

当該部分の音声(なにわTube動画 2024年1月23日15分14秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

声のトーンから、ふざけていじっているのではなく、本当に「洗面所」と聞こえたので不思議に思って聞き返したというところかと思います。

この「製麺所 → 洗面所」という聞き間違いですが、「製麺所」と「洗面所」はアクセントも音節構造も同じで、「せ」と「せ」という1文字分の違いしかないので、パッと見ただけでも聞き間違っても仕方ないなと思えるところがあります。

ただ、音声学的に細かく見ると、聞き間違っても仕方ないと思える点が他にもあることに気が付きました。

「製麺所」はひらがなで書くと「せいめんじょ」ですが、実際の発音はeiが長母音化して [seːmendʒo] のようになります。

長母音化した[eː]の直後にある[m]の音は鼻音と呼ばれるタイプの音で、発音の際に鼻に息を抜いて発音します(このとき、口蓋垂という口の奥の方にある部分が下がってくることで鼻に空気が抜ける状態が作られます)。

一方、鼻音以外の音の発音の際には口蓋垂は下がらず、鼻に空気が抜けません。

ということで、「製麺所」の前半部分(「せいめ」)の発音の際には、[seː]までは口蓋垂が上がった状態で鼻に空気が抜けず、[m]の瞬間に口蓋垂が下がって鼻に空気が抜け、次のeのときには口蓋垂が上がってまた鼻に空気が抜けなくなることになります。

ただ、口蓋垂の上げ下げする動作は連続的なものであり、mになる瞬間に一気に下げて、mを言い終わったら一気に上げるということは難しい(車とか電車の動きを想像すると分かる通り、物が動きだす際には一気に最高速度に到達することは無く、徐々にスピードが上がって最高速度に到達し、止まる際にも一気に速度がゼロになるのではなく、連続的に速度が下がっていくのが普通です。それと同じような感じだと考えれば良いと思いと思います)ので、実際の発音ではmを発音する少し前からmの発音のための準備(口蓋垂が下がる)が始まり、mの発音が終わってしばらくの間はmの発音のために下げていた口蓋垂が上がりきらない状態となります。

結果的に、mの前後の母音の発音の間にも部分的に鼻に空気が抜けた状態となり、鼻母音(=鼻音化した母音)と呼ばれるような音が生じてしまいます。

ごちゃごちゃと理屈を並べてきましたが、簡単に言うと、「製麺所」の発音における[seː]の母音の後半部分は、鼻音の特徴を持ってしまっていて、[se]+鼻母音という構造になっているということです。

一方、「洗面所」の「せん」に含まれる「ん」は鼻音で、[se]+鼻音という構造です。

ということで、音声学的に細かく見ると、「製麺所」と「洗面所」の違いは「せ」と「せ」、すなわち単なる母音と鼻音の違いではなく、[se]+鼻母音と[se]+鼻音、すなわち鼻母音と鼻音の違いということになります。

母音(=鼻音ではない)と鼻音の間よりも、鼻母音(=鼻音化した母音)と鼻音の間の方が互いに音声的な共通点が多く、区別が付きにくいことになるので、「製麺所 → 洗面所」の聞き間違いが起こるのも無理はないといったところでしょうか。

なお、今回の例ではmが周りの母音の発音に影響を与えるという話でしたが、言語の発音においてある音の発音の動作が周囲の音の発音に影響を与えることはとても一般的な現象(「調音結合」(coarticulation)と呼ばれたりします)で、XYという音の並びがあったとき、XはYの影響を受け、YもXの影響を受けていることになります。

また、XZという音の並びがあったとすると、このときのXはZの影響を受けたXとなっていて、XYのXとXZのXは厳密には音が異なっています(ただし、調音結合による音の変化は必ずしも大きなものではないので、聞いても音の違いには気付きにくく、音響分析をしないと違いが分からないこともよくありますが・・・)。

こういった音声の細かい話に興味がある人は、音響音声学や知覚音声学といった分野を勉強してみると良いでしょう。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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