なにわTube【2023年7月11日】感想文

今回の動画は前回の続きと言うことで、前回対象とならなかった4名(大西くん、高橋くん、藤原氏、大橋くん)のあるあるに関する議論が繰り広げられていました。

今回も気になった点を挙げていきます。


冒頭・締めのあいさつ

今回は先週からの続編ということで、冒頭あいさつはありませんでしたが、代わりに締めのあいさつは通常通りでした(前回とは逆)。

発音上、これまでと特に大きく異なるとか言う点もありませんでした。


イントネーション vs. アクセント

10分46秒付近:「ねーちゃんのイントネーション」

「藤原丈一郎あるある」の候補として大西くんが出したのが「ねーちゃんのイントネーションが独特」というものでした。

当該部分の音声(なにわTube動画 2023年7月11日10分46秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

動画内で「独特」とされたのは「ねーちゃ」(下線が低いトーン、太字が高いトーンということで、低低高低)というアクセントになっているという点で、確かに東京方言でのアクセントのパターン(「ーちゃん」(高低低低))と比べたら独特だということになるでしょう。

藤原氏の他に大橋くんや西畑くんも「独特」なタイプの方で発音しているようで、動画内では「関西弁なんかな?」ということで片付けられていましたが、大西くんも関西弁であるのは同じなので、それでは説明になっていません(大西くんは兵庫出身なので、同じ関西弁とは言っても細かい部分で地域差があるのかもしれませんが・・・)。

管理人は関西出身ではないし関西の方言の細かな地域差にも詳しくはないですが、関西方言に関する手持ちの3つの辞書(中井幸比古編著の『京阪系アクセント辞典』、中井幸比古著の『京都府方言辞典』、平山輝男編の『全国アクセント辞典』)で「ねーちゃん」(ねーさん)のアクセント型を調べてみて、どれが関西方言で一般的と言えそうかを見てみることにしました。

結果としては、以下のような感じでした(辞書では専門家にしか分からない記号で書かれているので、知らない人が見ても分かるようにこちらで「高低低低」などに書き換えて表示しています)。

見出し語アクセント型
『京阪系アクセント辞典』ネーサンーさん(高低低低)
稀なパターン:ねー(低低高低)
『京都府方言辞典』ネーサン
ネーチャン
ーさん(高低低低)
親しみを込めた、庶民的なアクセントとしてねー(低低高低)もある
(ねーさんがねーちゃんになった場合も同じ)
『全国アクセント辞典』ネーサンーさん(高低低低)

結論から言うと、藤原氏の「ねーちゃ」というアクセントは関西方言に存在するが、一般的ではなく、むしろ大西くんが言っていた「ーちゃん」の方が関西方言としても一般的である、ということのようでした。

もちろん、これは辞書が編纂されたころの時代の話なので、最近の若年層では傾向が変わっている可能性も否定はできませんが・・・(「ねーさん(ねーちゃん)」に関しては関西も東京も同じパターンだから、あえて東京と変えることで関西の若者が自身のアイデンティティを保とうとしているとかでしょうか?)。


今回も「なにわ男子あるある」に関連した動画ということで、ついでに「ねーちゃんのイントネーション」に関連したなにわ男子あるあるを一つ。

本件に関連した「なにわ男子あるある」:アクセントのことをイントネーションと言いがち

このあるあるを説明するために、前置きとしてアクセントとイントネーションの違いから簡単に解説しておきます。

「アクセント」という単語は様々な意味で使われますが、今回話題になった「ねーちゃん」の音調がどのようになるか、というような日本語の音声学・音韻論関連の文脈では、単語ごとに定められた高低の音調のパターンのことを指して使います。

特に、多くの日本語諸方言では音の下がり目(高から低に切り替わる位置)が重要だとされていて、この下がり目位置のことを単語のアクセント核と呼んだりすることもあります(アクセント核の位置は単語ごとに決まっていると考えられています)。

一方で、イントネーションというのは、単語ごとに決まっているのではなく、文全体にかかる音調(平叙文のイントネーション vs. 疑問文のイントネーションなど)のことを言います。

多くの日本語の方言では文末が下降調だと平叙文だと受け止められますが、上昇調になると疑問文になります。

「ねーちゃん」を例にして、「ねーちゃ」と読む場合と「ーちゃん」と読む場合について、それぞれ平叙文「ねーちゃん。」と疑問文「ねーちゃん?」がどのような音調になるかを考えてみましょう。

単語自体の音調平叙疑問
ねーちゃ」の場合ねーちゃ→」ねーちゃ⤴」
ーちゃん」の場合ーちゃん→」ーちゃん⤴」

平叙と疑問文の違いは、文末の音調(イントネーション)で決まり、単語自体の音調(特に、アクセント核の位置)は影響を受けることがありません(逆も同じで、単語自体のアクセント核の位置がどうであれ、平叙・疑問のイントネーションの現れ方は一定です。「ねーちゃん」の例だと分かりにくければ、「雨」と「飴」は単語単独ではそれぞれ違う音調を持っており、疑問文(「雨?」と「飴?」)になってももともとの「雨」と「飴」のアクセント型の違いは保たれます。それと似たようなことだと考えても良いでしょう)。

以上のように、元の単語がどのような音調であるか(=アクセントの問題)と、文全体の音調(イントネーション)の話は独立したものだと言えるので、専門家の間では「アクセント」と「イントネーション」というのは異なるものとして扱われているのです。

さて、「ねーちゃん」という単語を「ねーちゃ」と「ーちゃん」のどちらで言うかというのは、この単語の音の下がり目はどこにあるか(関西弁の場合はアクセント核の他にも音調に関して重要な要素がありますが、ここでは省略します)という議論をしているのと等しいので、これはアクセントに関する話となります。

テレビの『まだアプデしてないの?』で藤原氏が野球実況の訓練を受けた際に、どうしても方言が出てしまいがちであることを指摘されていましたが、その際にアナウンサーの人は関西弁の「イントネーション」ではなく「アクセント」と言っていましたし、各単語の音調がどのようであるかを記載した辞書がNHK出版から(ほか様々な出版社からも)出されていますが、辞書の名称は『NHK日本語発音アクセント辞典』であって、「イントネーション辞典」ではありません。

・・・で、ここからがようやく本題ですが、なにわ男子のメンバーは以前からずっとアクセントに関する話題になると「アクセント」ではなく「イントネーション」という用語を用いる癖があり、個人的にはこれもなにわ男子あるあるの一つかなと思っています。

確かにアクセントもイントネーションも広い意味では音調のことを言っているので、大した違いはないし別にいいではないかという意見も分かるのですが、地域ネタで例えると福岡県外の人にとっては博多も小倉も柳川も朝倉も全部「福岡」という認識(なぜなら、どれも福岡県内にある地域だから)なのに対し、福岡市の人に話をすると「○○は福岡じゃない!」(○○がどことは言いませんが・・・)という反応が返ってくるのと似ていて、音声学・音韻論をやっている人間からすると「それはイントネーションじゃない!」ということになるのです。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

本文中で引用・言及した辞典関係

・中井幸比古(編著)(2002)『京阪系アクセント辞典』勉誠出版.

・中井幸比古(2002)『京都府方言辞典』和泉書院.

・平山輝夫(編)(1960)『全国アクセント辞典』東京堂出版.

・NHK放送文化研究所(編)(1998)『NHK日本語発音アクセント辞典(新版)』NHK出版.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA