なにわTube【2022年12月27日】感想文

今回のなにわTube動画は各メンバーの2023年の目標を決めるという内容でしたが、今回も音声学的に、また、個人的に興味深いポイントが多々ありました。

以下、簡潔にまとめていきます。


冒頭・締めのあいさつ:締めのあいさつ、連続「あり」記録更新

今回も冒頭・締めのあいさつともにありました。

締めのあいさつに関しては、今回で「あり」が6連続になっていて、実はこれはなにわTubeチャンネル開設後の最長記録でもあります。

今後記録が更新され続けていくのか、楽しみなところです。

発音面では、冒頭の「せーの」が若干「つぇーの」っぽく聞こえる気がしますが、これは西畑くんの発音の問題ではなく、動画編集の際にsの出だしの部分がカットされてしまったためだと考えられます(※sの子音の出だしの部分を削除してしまうことで、音響的にtsの特徴と似た音になってしまうのでそう聞こえるという現象があります)。


促音+ラ行子音

3分6秒付近ほか:キッレキレ

長尾くんが考案した西畑くん用の自己紹介ギャグのなかに「キッレキレ」という表現が出てきていました。

これは切れが良いことを表す「キレキレ」に促音(小さい「っ」)が入って強調形になったものだと考えられます(ピカピカ → ピカピカやパサパサ → パサパサなどと同じパターン)。

実は、促音の生起には色々な制約があり、ラ行子音の前に促音が生じるというのは日本語の中ではとても珍しいことなのですが、オノマトペ(擬音語や擬態語など)に促音を追加して強調形を作りだす過程は適用範囲が極めて広く、キレキレ → キッレキレの例のように、オノマトペの強調形においては通常許されないはずの「促音+ラ行子音」という構造が許容されてしまうのです。

以下、この「促音+ラ行子音」に関して、発音面から少し詳しく見ていきます。

日本語のラ行子音は、ローマ字表記ではrで書かれるので、日本語のラ行子音は英語のrと近い音だと思っている人が多いのではないかと思いますが、実際のラ行子音の発音は「弾き音」とか「たたき音」と呼ばれる音(発音記号では、[ ɾ ])であり、英語のrともlとも違う音です(音声学における子音の分類方法に関しては、用語解説のページを設けているので興味がある人はご覧ください)。

日本語のラ行子音の発音の特徴は、舌の先が上の歯の裏~歯茎付近に一瞬触れるような感じで非常に素早く瞬間的に作り出される音だという点です。

一方、促音は一般論としてどのような音かというと、後ろにある音の発音動作を長く引き延ばすようにして出される音で、例えば「肩 (kata)」と「勝った (katta)」を比較してみると、kataのtの発音の際には舌先を上の歯茎に当てて閉鎖を作る動作が行われますが、kattaの場合、そのtの閉鎖の動作がkataのときよりも長くなりますし、「下線 (kasen)」と「合戦 (kassen)」であれば、やはり違いはsの発音時間の長さ(kassenの方がより長い)になります。

このように、促音はそれ自体は音価を持たず、後ろの音に同化してその発音動作を長く引き延ばすことによって作られますが、上述のように「瞬間的に作り出される音」という特徴を持つ日本語のラ行子音[ ɾ ]の場合、これを長く引き延ばしてしまうと「瞬間的」という特徴が失われてラ行子音の発音が[ ɾ ]でなくなってしまうというジレンマが生じます。

これを解消するため(かどうかは分かりませんが、音声的な事実として)、日本語の「促音+ラ行子音」という構造の場合、ラ行子音は[ ɾ ]ではなく英語のlに近い音で発音されます。

英語のlの場合、舌先を上の歯茎にくっつけ、その状態で舌の側面を緩めて息を流しながら発音する音であるため、発音動作を延長することができ、促音の特徴(発音動作を長くする)を実現させることができるようになります。

実際に、なにわ男子メンバーの発音を聞く限り、また、音響分析でスペクトログラムを見る限りでは、英語のlのような(完全に同じとは言わないにしても、少なくとも通常の日本語のラ行子音[ ɾ ]よりはlに近い)音になっています。

キッレキレの音声:実例

最初の2つが長尾くん、3つ目と5つ目が西畑君、4つ目が大西君による発音です。

(なにわTube動画 2022年12月27日3分7秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください
(なにわTube動画 2022年12月27日3分8秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください
(なにわTube動画 2022年12月27日3分25秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください
(なにわTube動画 2022年12月27日3分31秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください
(なにわTube動画 2022年12月27日3分38秒付近より) ※再生時は音量にご注意ください
※図のピンク色の部分がキッレキレにおいてlっぽい音になっている部分。本来であれば非常に短いはずのラ行子音だが、母音並みに長くなってフォルマント構造もはっきりとしていて、通常の[ ɾ ]の発音からはかけ離れている。

少し話題が変わりますが、日本人が英語のrやlの発音(または聞き取り)が苦手なのは、日本語にそもそもこれらの音が存在しないためだと一般的には言われています。

ところが、なにわ男子の「キッレキレ」の発音を見て分かる通り、「促音+ラ行子音」という構造の発音ではlの発音が(無意識にではあっても)される、言い換えると、日本語でもlの音が出てくる状況はあるということです。

もし英語のlの発音が苦手だとか、どう発音したらいいのかわからないという人は、「促音+ラ行子音」の単語(キッラキラ、ビッリビリ、ツッルツル、デッレデレ、ドッロドロ、・・・)の発音をしてみたとき、自分の口の中で舌がどう動くのかを観察して、それと同じ動きをすれば英語のlの発音のコツを掴みやすくなるかもしれませんよ。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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