前回までの7人旅の続きかと思いきや、今回は高橋くん主演の映画にちなんだ内容でした。
続き物だから冒頭・締めのあいさつ共に無いだろうと思っていたのですが、不意打ちでした。
さて、今回も発音関連で気になった点がたくさんあったので、そのうち一部をピックアップしてみたいと思います。
冒頭でも書いた通り、今回も前回に引き続きあいさつはないだろうと予想していましたが、両方とも普通にあり、うれしい誤算でした。
「どうも」の部分もオーソドックスな(新型ではない方の)言い方で、新型どうもの波も収まってきたのかもしれません。
次回は4thシングルの発売日の直前のタイミングになるので、旅動画はさらに延期みたいな可能性もあるんでしょうかね?
今回の動画でのお題に関連して「水族館」というワードが何度も発音されていましたが、どのメンバーもこれを「すいぞっかん」と発音していました。
今回の動画の中では高橋くんが「緊張して活舌が悪くなっている」といじられていましたが、「すいぞくかん」→「すいぞっかん」という発音に関してはなにわ男子のメンバーたちも、動画を見ている我々も、発音に違和感を覚えることはなかったのではないでしょうか?
ただ、発音に重点的に意識を向ければ、「すいぞっかん」と言っていて確かに「すいぞくかん」とは言っていないぞと認識はできると思います。
なぜこういうことが起こるか?ですが、音声学的な一つのポイントとして、これまでにも何度か登場した「母音の無声化」という現象が関わっていると考えられます。
【参考】母音の無声化についてはこちらの用語解説のページで詳しく説明しています。
用語解説:母音の無声化母音の無声化の規則を簡単に言うと、母音のiやuが無声子音(p, t, k, sなど)に挟まれると消えてしまうということですが、母音が無声化して消えた結果、以下に挙げたように単語によっては同じ子音が連続する状態になることがあります。
本来の漢字の読み | 実際の読み | |
学校 | gakukoo | gakkoo |
悪化 | akuka | akka |
楽器 | gakuki | gakki |
各個 | kakuko | kakko |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
なお、↑ではk + kとなるものばかり挙げていますが、鉄塔(tetutoo → tettoo)や発展(hatuten → hatten)など、k以外の子音でも起こります。
母音が無声化したことで同じ子音が2つ重なってしまった形は、ちょうど日本語の促音(小さい「っ」)と同じ発音のパターンとなります(※促音は、後ろに来る子音と同じ音に変化します)。
学校や悪化などを「がくこう」「あくか」ではなく「がっこう」「あっか」と表記するのは、ある意味で実際の発音に忠実に書いていると見なすことができるでしょう。
では、話を戻して「水族館」に関してはどうでしょうか?
水族館(suizokukan)のkukの部分は、「学校」などと同じく無声化が起こる音の並びになっているので、発音上「すいぞっかん(suizokkan)」となっておかしくなく、実際に今回の動画のなにわ男子メンバーの発音でもそのようになっています。
発音規則上、日本語の発話では「すいぞくかん」は「すいぞっかん」という発音になってしまうのが自然なので、聞き手の側としても「すいぞっかん」と言われて違和感なくそれが「すいぞくかん」であると理解できるというわけなのです。
見方を変えると、学校や悪化などとは異なり、水族館だけがなぜか発音に忠実な表記になっていない(学校は表記(読み仮名:がっこう)と発音(gakkoo)が同じであるのに対し、水族館は表記(すいぞくかん)と発音(suizokkan)がずれている)とも言えます。
そうなっている理由が、単語が日本語に入ってきた時期など歴史的な問題なのか、語彙・意味的なものなのか、それ以外の別の理由なのか、管理人は詳しくないのですが、とにかく今回の動画を見て普段意識していなかった漢字の読みと表記の問題について考える機会になったので良かったと思っています。
ところで、発光(hatukoo)では「はくこう」ではなく「はっこう」と促音化するのに、格闘(kakutoo)では「かっこう」ではなく「かくとう」と促音化しない、というように、母音の無声化の結果異なる子音が連続する形になる場合、促音が生じるものと生じないものがあるという不思議な現象がありますが、実はこれも音声学的に説明がつきます。これについては話が長くなるので、いずれ機会があれば取り上げたいと思います。
高橋くんが「(自身が出演した映画の試写を)見たの?」と聞かれた際、「見ましたよ」と言うつもりが「むましたよ」と言ったとしていじられている場面がありました。
「滑舌が悪い」といじられていましたが、個人的には高橋くんが「むました」(mumasita)のように言ったようには聞こえなかったので、少し詳しく分析してみました。
結論としては、音響分析上も聴覚上も、「見ました」(mimasita)の母音iがほぼ発音されておらず、mmasitaのようになっているという描写が近いのかな、という印象でした。
ただ、iが完全に無くなってしまったということでもなく、次のaの母音の音色に若干のiっぽさが残っているなど、iが存在している痕跡も見受けられ、唇を閉じて発音するmが前後にある関係でiの発音が不完全なまま終わってしまったと考えれば発話速度の速い状態では起こりうる変化と言えなくもないので、これによって活舌が悪いということにはならないかな、と思います(ただ、それ以外のところでもいっぱい噛みまくっていたので、それもあっての「滑舌が悪い」といういじりなのでしょうが)。
一方、mmasitaという発音を聞いて、それを「むました」だと認識してしまった点についても理解できます。
日本語母語話者の場合、子音のみで母音が無い場合でもそこに母音があると認識してしまう(例えば、英語のscream /skriːm/の母音はiːしかないはずなのに、日本人にはsukuriimuのように本来ないuが聞こえてしまう)という知覚上の傾向があるので、冒頭のmに対して発音されていないはずのuを補ってしまっても不思議ではない、ということです。
ちなみに、「見ました」の場合は上で取り上げた母音の無声化の条件には本来当てはまらない(mimasitaのiの前後は有声音になっていて、無声音に挟まれてはいない)ので、この発音は一般的なものではなく、あくまで今回何らかの拍子に生じてしまった偶発的なものだと考えられるので、他の人が(もしくは、高橋くん自身が)別の機会に「見ましたよ」と言ったとして、同じ発音になる可能性は高くはないでしょう(逆に、水族館のように規則的に起こる現象であれば、誰が何度言っても大抵は同じような発音になると考えられます)。
本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。