なにわTube【2023年4月4日】感想文

今回は山形7人旅の第7弾ということで、銀山温泉に入りながらのトークがメインの内容でした。

温泉での撮影ということで、ずっと水が流れる音がしているわ残響がすごいわで音声の分析という観点からすると非常に厳しい(=変わった発音があったとして、発音自体の問題なのかそれが発音そのものとは別の原因でそう聞こえているだけなのか判断が難しい)感じですが、せっかくずっと毎週感想文を書き続けてきたのにここでお休みにするのは悔しいので頑張って音声学関連の話をひねり出そうと思います。


冒頭・締めのあいさつ

前回と同様、今回も冒頭・締めのあいさつはありませんでした。

今回の動画の中の次回予告を見る限り、旅動画は第8弾以降も続きそうなのであいさつ無しはまだまだ継続となりそうです。


有声性判断に対する母音の延長効果?

日本語を含め言語一般に、母音は直後に無声音(p, t, k, s, f, …)が来る場合に比べ、有声音(b, d, g, z, v, …)が来る場合の方が若干長めに発音されることが知られています(この現象は研究者によって様々な名称が付けられていて、pre-fortis clippingとか、prevoicing lengtheningとか、voicing effectなどと呼ばれたりもします)。

具体的な単語の例で言うと、母音としては同じ/æ/だが、batのaよりbadのaの方が発音上長めに発音されがちだ、ということです。

上記は発音する際の話ですが、子音が無声か有声かを聞き取る際、その前の母音の長さが一定の手がかりになり、子音の前の母音が長めだと短めの場合と比べて有声音だと判断されやすいことも知られています。

発音上、長めの母音は有声音と共起しやすく、短めの母音は無声音と共起しやすいという分布になっているので、聞き手はこうした分布の違いに関する知識(無意識かもしれませんが)を持っていて、聞き取る際にはその知識が活用され、長めの母音(=有声音と共起しやすい)を聞くと、短めの母音(=無声音と共起しやすい)を聞いた時に比べて、後ろにある子音が有声音っぽいと感じやすくなるのだと解釈されます。

突然なぜこんな話をし始めたのかというと、今回のなにわTube動画でのメンバーの会話を聞いていたところ、普段の動画よりも全体に無声音がやや有声音っぽく(≒本来濁点が付かない音に濁点が付いたような感じに)聞こえることが多いような気がしたからです。

まずは最もそう感じた部分の音声を例として挙げておきます。

9分20秒付近:留学

年末年始にしたことに関する話題の中で、藤原氏がオーストラリア旅行に行ったことを「留学」と表現した際、長尾くんが発した「留学」の発音が「りゅうがく」ではなく「りゅうがぐ」っぽい(でも完全な「りゅうがぐ」かというとそこまででもない)ように聞こえました。

長尾くんによる「留学」の発音(なにわTube動画 2023年4月4日9分20秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

東北でのロケなので発音を現地の方言に合わせて・・・ということでは全くなさそうなので、何か別の理由があると考えられます。

原因を探るために音響分析をしてみましたが、冒頭にも書いたように温泉内で水が流れる音や残響、その他雑音が凄いので、理由は正直はっきりしません。

ただ、もしかすると温泉での残響が激しいので、母音が本来の長さよりも若干長めに聞こえて、それによって子音がやや有声音っぽく聞こえがちになったのかな、と思ったりもしました。

先ほど述べたように長尾くんの発音だけでなく動画全体に普段よりも有声音っぽさが漂う感じの発音が多いような気がしましたが、残響のせいで母音が長めになったからだと考えるとある程度説明が付くかもしれません。

なお、音声学的には、子音が有声か無声かを判断する際の手がかりは無数にあると言われていて、前の母音の長さはそのうちの一つに過ぎず、しかも人によってどの手掛かりを重要視するかも違う場合があるので、上記の「留学」を聞いてまったく「りゅうがぐ」には聞こえないとか、むしろ「りゅうがぐ」にしか聞こえないといった感想を持つ人もいるかもしれませんが、それぞれの感覚がおかしいということではありませんのでご安心を。

【参考】有声・無声などの子音の分類については、以下の用語解説のページで解説していますので必要に応じてご覧ください。

用語解説:子音の分類

参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

子音の有声性に関する判断の手がかりに関する研究について

子音が有声・無声のどちらかを聞き取る際の判断の手がかりは複数あるという点については、Liskerによる以下の研究がよく引用されます(英語に関するものですが、多くは日本語にも当てはまります)。
・Lisker, L. (1986). Voicing” in English: a catalogue of acoustic features signaling /b/ versus /p/ in trochees. Language and Speech, 29(1), 3-11.

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