なにわTube【2024年3月5日】感想文

今回の動画のテーマは「僕のベスト3を当ててみよう」ということで、各メンバーがお題に沿って自分が思うベスト3を回答し、どの回答が誰のものかを当てるという内容でした。

今回も音声学的に興味深い発音が出てきたので、取り上げてみたいと思います。

その前にまずは挨拶の観察から。


冒頭・締めのあいさつ

前回の冒頭あいさつの発音の特徴(発話速度、ピッチレンジ、その他色々)は普段とはかなり異なっていましたが、今回は通常通りの感じの言い方に戻りました。

前回の感想文で予想したように、その回の事情(前回は俳句がテーマだったので、あえていつもと雰囲気を変えた言い方にしていた?)による一過性のものだったようですね。

また、今回は前半・後半に分かれて来週に続きがあるような内容ではなさそうですが、締めのあいさつがありませんでした。

シリーズものではない場合に締めのあいさつが無かったのはかなり久しぶりのことになります。

(※2024年3月12日追記:よく見たら、動画の最後に「次回ベスト3後半戦」と書かれていました。後半に続くので締めのあいさつが無かっただけだったようです。)


口蓋化(?)

1分37秒~41秒付近:出演作

「好きな映画ベスト3」というお題の回答一覧を見て、西畑くんがメンバーの出演作が入っていないことに気付いて発言する場面がありました。

なにわTube動画 2024年3月5日1分37秒付近より

この場面でテロップでは「出演作」と書かれていましたが、発音を聞く限りでは「しゅつえんしゃく」のように聞こえました(以下に実際の音声を示します)。

西畑くんによる「出演作」の発音

1分37秒付近

当該部分の音声(なにわTube動画 2024年3月5日1分37秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

1分41秒付近

当該部分の音声(なにわTube動画 2024年3月5日1分41秒付近) ※再生時は音量にご注意ください

「出演作」の発音は1分37秒付近と1分41秒付近にそれぞれ1回ずつ出現していますが、どちらとも「しゅつえんく」ではなく「しゅつえんしゃく」のように聞こえるように思いますが、いかがでしょうか?

もしかするとテロップが間違っていて、西畑くんは実際には違う単語(例えば、「出演尺とか?」)を言っていたという可能性も否定はできませんが、ここではテロップ通り「出演作」というつもりで「しゅつえんしゃく」となったという仮定で話を進めたいと思います。

「さく」が「しゃく」になるというのは、音声学的に言うと、もともとは無声歯茎摩擦音のsだった音が、調音点が硬口蓋寄りに移動してʃに変化したということになります(調音点などの用語の意味については、子音の分類方法に関する用語解説のページをご覧ください)。

このように、もともと硬口蓋タイプの音ではなかった音が硬口蓋タイプの音に変化する現象は、「口蓋化(palatalization)」などとも呼ばれ、日本語に限らず様々な言語に広く観察される一般的な現象の一つです。

口蓋化は後ろに母音のiや子音のyが来た場合などに特に起こりやすい現象ですが、今回の動画に出てきた「さく」→「しゃく」という変化に関して言うと、「さく (saku)」には口蓋化を引き起こしやすいyの音やiの音は含まれておらず、特に口蓋化が起こりやすい環境であるわけではありませんので、なぜこのような変化が起こったのかはちょっとよく分かりません(後述するように、s → ʃという変化が起こると小さくかわいいイメージになるので、それを狙ってあえてそのように発音したとかでしょうか?)。

なお、口蓋化の生起は「後ろにiやyが来るとき」という条件に必ずしも限定されるものではなく、特に日本語だと幼児の発音において頻繁に観察されることが知られています(例:「おさかなさん」→「おしゃかなしゃん」(s → ʃ)、「です」→「でちゅ」(s → tʃ))。

「出演作」が「しゅつえんしゃく」という発音になると、「しゅつえんさく」という発音のときと比べてやや幼くかわいい印象になったと感じる人もいるかもしれませんが、そのような印象が生じたのは、日本語の幼児の発音に「しゃ」や「ちゃ」といった硬口蓋タイプの音が多いという暗黙の知識を我々が持っているためであると考えられます。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。

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