なにわTube【2024年1月9日】感想文

今回は西畑くんがキャンピングカーを運転する(=2022年末に「2023年の西畑くんの目標」として設定されていたが達成できなかった目標を達成する)という内容でした。

今回の動画も色々と音声学的に興味深い発音が出てきていたのですが、1月9日の音声学の授業でたまたま英語のlとrの話をしていて、それに間接的に関連する発音が今回の動画で出てきたのでそれを取り上げてみることにします。


冒頭・締めのあいさつ

まずはいつもの通り冒頭・締めのあいさつから。

今回は冒頭あいさつ、締めのあいさつともに出てきて、通常通りのパターンでした。

ただ、冒頭あいさつについては以前よりも発話速度が速くなってきているような印象を受けました。

発話速度は回によってかなりばらつきがあるのではっきりとした傾向とまでは言えませんが、言い慣れてくると速くなるという一般的な傾向があることを考えると速くなってきていてもおかしくはないと言えるでしょう。


ラ行の促音

3分27秒付近ほか:「ひっろ」

日本語では、促音(小さい「っ」)を入れることにより、促音が入っていないときと比べて程度が強調される場合があります(例:「ピカピカ → ピカピカ」、「すごい → すごい」)。

今回の動画で様々なキャンピングカーを見学する際、メンバーたちが車内が思ったより広いことに驚いている場面がありましたが、その際に「広い」に促音を入れた「ひっろ!」という発音が出てきていました。

この促音という音は、基本的には阻害音(=閉鎖音、摩擦音、破擦音)と呼ばれるタイプの音の前にしか出てこないので、「広い → ひっろ!」のように共鳴音(=鼻音、接近音、流音)の前に出てくることは本来ならできないはずなのですが、なぜか出てきてしまっています(閉鎖音、摩擦音などの子音の種類については、子音の分類方法に関する用語解説のページをご覧ください)。

形容詞に促音を付けて強調する言い方を色々考えてみると、「甘い → あっま!」、「怖い → こっわ!」、「早い → はっや!」のように、阻害音以外の前でも促音が出てくる形が意外にあるので、形容詞を強調して言うような場合には例外的に促音が阻害音以外の前で出てくる形が許容されやすいということなのかもしれません。

さて、そんなわけで促音の生起という観点からはやや特殊な「広い → ひっろ」という言い方ですが、発音の面でも少し特殊です。

通常、促音は以下に例示するように後ろに来る音をそのままコピーして発音するので、結果的に後ろの音が2つ分の長さになるような感覚で発音されます。

促音の後ろに来る音促音部分の発音
ラッキーkrakkii
ポップppoppu
ポケットtpoketto
グッデイdguddei
ドッグgdoggu
ウィッシュʃwiʃʃu

同様に、先ほど挙げた「甘い → あっま!」、「怖い → こっわ!」、「早い → はっや!」などは、amma(※音としては「あっま」も「あんま」も似たような発音になって区別が付きにくい気がします)、kowwa、hayyaのように、促音の後ろに来ている音と全く同じ音として出てきます。

つまり、促音は阻害音の前でしか生じないという一般的なルールに反するような例であっても、促音を発音する際には後ろの音と同じ音として発音するという点で共通した発音のルールが適応されると考えることができそうです。

では、「広い → ひっろ!」の場合はどうでしょうか?

日本語のラ行子音は、英語のlともrとも異なる「弾き音/たたき音」と呼ばれる音で、舌の先端部分が上の歯のすぐ後ろ側の歯茎あたりに瞬間的にくっついて離れることで発音されます(発音記号では[ ɾ ]と書かれることが多いです)。

英語のlの音も、舌の先が上の歯茎にくっついて発音されるという点では同じですが、英語のlは舌の先端部分が上の歯茎に接触する時間が日本語のラ行音よりもずっと長いという特徴があります(舌の先端を上の歯茎に付けたまま、舌の側面部分を緩めることでそこから息が流れるように発音する音が英語のlです)。

ともかく、日本語のラ行子音は ɾ なので、促音は後ろの音と全く同じ音をコピーして2回分の長さで発音するという原則から行くと、「ひっろ」は hiɾɾo のような発音になることが予測されますが、実際の発音では hiɾɾo ではなく hillo のような感じで発音されています(上で「広い → ひっろ」が発音の面でも少し特殊だと言ったのは、こういう理由です)。

おそらくですが、hiɾɾoを発音しようと思うと、舌の先を上の歯茎に瞬間的にくっつける動作を2回分行うか、もしくは促音がないhiɾoと比べてhiɾɾoの場合はɾの発音動作を2倍の長さにするなどしないといけないわけですが、前者の方法だと瞬間的に舌を上の歯茎につけたらすぐ離してすぐまたつけてまた離してという形でかなり発音しにくい動作を行うことになってしまうし、後者であれば ɾ を長めに発音することで「舌先が上の歯茎に瞬間的につく音」という ɾ の定義に合わなくなってしまうということで、日本語では「促音+ラ行音」という音が出てきたときには、やむを得ずɾの代わりにl(舌先が上の歯茎に長くつく音)で発音するような仕組みになっているのだろうな、という印象です。

さて、ここまでは「広い → ひっろ」のような「促音+ラ行」の発音についての話でしたが、この話を別の視点から見ると、「日本語にはlの音が無い(だから英語のlの発音が難しい)」と言われているが、実は条件次第では日本語の中にもlの音が出てくることがあるという風に捉えなおすことができます(音素と異音という概念を知っている人であれば、音素である促音の異音の一つとしてlの音がある、ということになります)。

英語のlの発音をうまくできるようになりたいがどう発音したらいいか分からないという人がもしいれば、「ひっろ」「かっる」(=「軽い」に促音を付けて強調した形)など、「促音+ラ行音」という単語を自分で何度も繰り返し発音して舌がどのような動きをしているかを感じてみて、それと同じ舌の動きを意図的にできるように練習すると英語のlの発音の感覚が掴みやすくなるはずなのでぜひお試しください。


参考文献・出典

本文中で取り上げたメンバーの発言はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したものです。

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