翌日が5thシングルのリリース日ということでどんな内容が来るのかと思っていたところ、今回の動画はなぜか縄跳びをするという内容で、西畑くんがドラマの撮影で不在ということもあって色々とイレギュラーな感じでした。
さて、今回も音声学的な目線で気になった点をピックアップしてみます。
ここ最近、冒頭あいさつに激しめの効果音が重なってしまっていて困り果てていましたが、今回はちょうどいい(分析の邪魔になりにくいような)タイミングで入れてくれていたので非常にありがたかったです(まさかとは思いますが、このサイトを見て配慮してくれたとか?)。
今回は西畑くんが不在だったため、代わりに道枝くんがMC役ということであいさつの声掛けなどをしていた時点で普段とは違っているのですが、冒頭にある「せーの」が省略されていたり、「どうも~」のアクセントが異なっていたり、締めのあいさつが「(ということで)以上、なにわ男子でした~」ではなく「(というわけで)また、来週~」(←この終わり方はなにわTubeとしては初)になっていたりと、イレギュラー尽くしである意味新鮮でした。
今回は西畑くんがドラマ「ノッキンオン・ロックドドア」撮影で不在とのことですが、ちょうどドラマの名称の中に音声学に関わる話題が出てきていました。
英語のKnockin’on Locked Doorを日本語で表記したのが「ノッキンオン・ロックドドア」のようですが、音声学を学んだ人もしくは英語の発音に詳しい人だと、色々と違和感を覚えるかもしれません(ちなみに原作がもともとこういうタイトルだったようで、ドラマはそのタイトルに忠実に従ったということのようですね)。
これについては色々な切り口から語ることができますが、今回はlocked doorの-ed(英語の過去形・過去分詞形を作る要素)の発音についてです。
-edの発音は実際には[d], [t], [ɪd]の3種類があり、どの発音になるかは一定のルールがあります。
簡単に言うと、-edが付く直前の音がtまたはdだったら[ɪd]で発音され、それ以外の場合、-edの直前が「無声音」というタイプの音であれば[t]で、「有声音」というタイプの音であれば[d]で読まれる、という感じです。
このように、隣接する音の種類に応じて、ある音(この場合は-edの発音)が隣接する音と共通する特徴を持つように変化する現象のことを、音声学では「同化」と呼びます(少し言い換えると、-edの発音が状況に応じて変化するのは同化現象によると解釈できることになります)。
さて、lockedの場合、-edの直前、つまりlock [lɑːk]の語末の音である[k]は「無声音」にあたるので、-edの発音は[t]となります。
上で説明した-edの同化という現象に基づいて考えると、lockedは発音上[lɑːkd]ではなく[lɑːkt]であり、発音的にはロックドドよりはロックトドアの方が正しいように思えます。
が、この程度のことは音声学を学んだり英語の教員なるために専門に勉強した人でなくてもちょっと英語に詳しい人ならすぐに気づくようなことですし、原作者もわかっているでしょうから、あえてそうしなかったのだろうと推察します。
なぜか?!は原作者にしか分からないでしょうが、音声学的な観点から見ると、dのような有声阻害音(※閉鎖音、摩擦音、破擦音を総称して阻害音と言います)は、tのような無声阻害音よりも「重たい、大きい、強い、・・・」といったイメージを喚起させやすいことが知られています(こういった音と意味の結びつきのことを音象徴と言ったりもします)。
なので、あえてロックドドアとすることで、重々しいというか、気軽にノックできない雰囲気を醸し出したかったのだ、みたいな解釈はできるかもしれません。
もしくは、日本語に置いて濁音の連続はあまり好まれず、構造的に避けられやすいので、あえて濁音を連続させることで通常とは違う感を演出する効果を狙ったのかもしれない、みたいな解釈もあり得るでしょうか。
真相は分かりませんが、ともかく音声学という観点からはこんな感じに想像を膨らましてみることもできるよという話でした。
最後になりますが、個人的にはロックドドアとロックトドアのどちらが英語として正しいかというような議論自体にはあまり意味がないと思っています。
というのも、どちらも挿入母音が大量に入ってしまってそもそも音節構造が原形をとどめていませんし、locked door [lɑːktdɔːr]のように(綴りではなく発音上)子音が連続する場合、閉鎖音は脱落してしまうので、kやtは音としてほとんど聞こえてこない(発音上、閉鎖の動作のみで終わってしまい、閉鎖の開放が行われない=音としては出てこない)のが一般的で、「ロックドドア」であっても「ロックトドア」であっても英語の発音に近いとは到底思えないからです。
また、有声音・無声音とか閉鎖音といった子音の分類方法については、以下の用語解説のページにまとめてあります。こちらも必要に応じてどうぞ。
用語解説:子音の分類