今回は7人旅の9回目ということで、寝る場所を決めるために卓球勝負をするという内容でした。
いつもながら音声学的に興味深い現象が色々出てきていたので、その中からいくつか取り上げてみます。
今回も冒頭・締めのあいさつはありませんでした。
これまでにも書いてきたとおり続き物の場合はあいさつ無しというパターンになるので、これに関して特に驚きはないのですが、気になるのはいつまでこの状態が続くかという点です。
以前、今年の7人旅動画も昨年の7人旅動画と同じく10回目まであると仮定すると、あいさつ無しが4月いっぱいまで続くことになる・・・的なことを書きました(※2023年3月28日動画感想文)が、動画最後の次回予告には「次回はお休みタイム」としか書かれていなかったので、次回(10回目)が最終回ではない可能性もあり、そうなるとあいさつ無しの状況は5月に入っても続くことになりそうです。
今回の動画の卓球勝負の特徴として、卓球ラケット以外のものを使って卓球をするという点がありますが、その中に出てきたバドミントンラケットについて、メンバーの発音が「バドミントン」だったり「バトミントン」だったりしていました。
参考までに該当箇所の音声を時系列順に挙げてみます(効果音が重なっていたり、残響が激しかったりする関係ではっきり分かりにくい面もありますが、管理人には道枝くんと大橋君は「バドミントン」、藤原氏と高橋くんは「バトミントン」と言っているように聞こえました。個人差もあると思いますが、皆さんにはどう聞こえるでしょうか?)。
道枝くんによる発音
藤原氏による発音
高橋くんによる発音
大橋くんによる発音
また、単に発音面で個人差が見られるだけでなく、テロップでは「バドミントン」と書かれているのに、くじでは「バトミントン」と書かれているなど、表記のずれも観察されます。
英語ではbadmintonだから「バドミントンが正解でバトミントンは間違い」と断じてしまうのは簡単なのですが、音声学者的にはなぜこのような音の混同が起こってしまうのかという点の方により関心があります。
例えば、同じ「ド」と「ト」の違いでも、「ドラえもん vs. トラえもん」の方が「バドミントン vs. バトミントン」よりも音が違うと感じられる度合いが強いかと思います。
「ド」と「ト」の違いは子音dとtの違いであり、音声学的には声帯振動があると有声のd、ないと無声のtということになりますが、↑の2つの単語のペアの例の話を言い換えると、「バドミントン vs. バトミントン」の場合は有声・無声の違いが目立ちにくく、結果的に発音する際や書く際に混同しても違和感なく済んでしまいがちだということになります。
なぜこういった現象が起こるのかですが、複数の要因がありそうな気がします。
まず、バドミントン自体は英語から取り入れた単語だと思われますが、英語の発音の際にbadmintonのdは音節構造上、音節末(Coda)の位置にあり、英語の発音ルール上、dの発音が弱まったり極端な場合は脱落してしまったりして、はっきりとした発音がなされない音になります。
仮にdではなくtだったとしても同様に脱落してしまうところなので、発音を聞いた時にdとtの違いがそれほど目立たない(前の母音の長さが違うなどの手がかりはあるのでネイティブスピーカーなら分かるが、日本人には識別が難しい)ので、どちらで言ってもそこまでの違和感に繋がらない可能性があります。
別の要因として、日本語では同じ要素内部に濁音が複数生じることを嫌う傾向(連濁の阻止など)があるので、「バド」だと濁音が連続してしまうのでそれを避けようとして「バト」にしたくなってしまい(聞き取る際もその方が違和感がない)、結果的に「バトミントン」も許容されているという可能性もあります。
また、一般に音声の聞き取りにおいては、単語の途中に出てくる音の違いよりも単語の先頭にある音の違いの方がはっきり分かりやすいので、「バドミントン vs. バトミントン」の場合は「ド」と「ト」が単語の先頭には無いので音の違いに気づきにくい可能性があり(逆に、「ド」と「ト」が単語の先頭に「ドラえもん vs. トラえもん」の場合はとても違和感を覚えやすいということになりますね)、これも要因の一つかもしれません。
単一の要因で説明できる現象であるかどうかは置いておくとして、何らかの音声学的な要因が関与していることは間違いなさそうだな、と動画を見ていて思った次第です。
本文中で取り上げたメンバーの発言や音声・図はすべて下記の動画の該当部分(具体的な個所は本文中に明記)から引用したもの。