2022年8月23日のなにわTubeの動画でも色々と興味深い発音が出てきていました。
これまでは気になった点を一つ一つ挙げていましたが、今回は一つ一つ挙げるには量が多すぎるので、テーマ別にまとめられそうな部分はまとめて紹介していきます。
今回の冒頭あいさつにおける「どうも~」も新型でした。
新型どうもが連続して出てきていますが、従来型と完全に入れ替わってしまうのでしょうかね。
ちなみに、以前の感想文の中で新型の「どうも~」の特徴として「外国語風(づぅおも~)」であり、dの発音が通常の日本語の発音とは少し異なることを挙げていましたが、その後複数回にわたって新型タイプに接する中で、この定義ではうまく分類できない(YouTube動画にありがちな話ですが、BGMや効果音、その他雑音等によりdの部分の発音がどうなっているのか判断しにくい)ケースに遭遇しています。
ただ、dの部分の発音がはっきり分からなくても、「ど」のoの母音が二重母音的になっている(oの発音中、聴覚上母音の音色が変化しているように聞こえて、音響上もフォルマントにはっきりとした動きが見られる)という特徴から従来型とはっきり区別ができるので、より安定して分類ができるように「新型どうも~」の定義を「ど」の母音が二重母音的になっているという形に変更し、今後はこの定義に沿って分類していくことにしようと思います。
幼児の発音の間違いには一定の傾向があることが知られています。
例えば、日本語の幼児で言うと、以下のようなものが典型的で、いわゆる赤ちゃん言葉としても定着しています。
音の変化 | 語例 |
s → ʃ | おさかな → おしゃかな |
s → tʃ | です → でちゅ |
ʃ → tʃ | しょうぼうし → ちょうぼうち |
s(, ʃ, tʃ) → t | とうさん(しゃん・ちゃん) → とうたん |
z → ʒ | ~だぞ → ~だじょ |
z → d | ぞうさん → どうたん |
表の変化のパターンから言うと、例えばs, ʃ, tʃ, tについては、s → ʃ → tʃ → tの順で、右に行くほど幼児っぽくなる、という感じでしょうか。
大人がその間違いのパターンを真似すると、子供らしい(=かわいい)印象の発音になりますが、なにわ男子の場合、かわいさを前面に押し出しているためなのかどうかは分かりませんが、意図的(または無意識)にこうした発音を取り入れていると思われるケースが多々あります(例えば、「すき → ちゅき」や「りゅうせい → りゅちぇ」などは s → tʃ というパターンで、これは幼児の音変化に典型的なパターンと同じ変化です。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の動画の中にも上記のような音変化があったねという話になります。
西畑君がホワイトボードにお兄さんの名前を書こうとした際、高橋くんが「おにいたん」と発言した箇所です。
たまたまこの動画がアップされた日の週は出張に行っていて、普段とは違う音声環境で見ていたので、最初は聞き間違いかと思ったんですが、出張から戻ってから普段の音声環境で聞いてもそう聞こえるし、音響分析をしても「おにいさん(ちゃん)」のようにs(またはtʃ)を発音している痕跡はゼロだったので、「おにいたん」確定となりました(意図的なものかたまたま言い間違ったのかは不明ですが、言い終わった後「しまった」的な顔はまったくしていないので、意図的な方でしょうか?)。
高橋君の表情を含めて赤ちゃん言葉を聞きたい方は当該動画の該当部分をぜひご覧ください。
西畑君が先輩とのエピソードを語っている中で、松竹座(しょうちくざ)のことをこう言っているように聞こえました。
これも出張先で聞いた時にそう聞こえたものの確信が持てなかった部分ですが、出張から戻ってから聞いてもやはり同じで、100%「ちょうちくざ」かと言われると若干「しょうちくざ」っぽさはあるものの、やはり「ち」の方に聞こえる感じでした(皆さんにはどう聞こえるでしょうか?)。
「し」と「ち」(ʃとtʃ)はよく似た音で、音の出始めの振幅上昇が緩やかだとʃに、急激だとtʃに聞こえるようになりますが、音響分析をしてみると、当該音声は振幅の上昇がかなり急になっていたので、tʃっぽく聞こえたのかな、という印象です。
こちらについては、ただの言い間違い(「しょうちくざ」はすぐ後ろに「ち」の音が来るので、それに引きずられた?)の可能性が高そうには見えますが、なにわのセンターとしてかわいく見せるために意図的にやっていたのだとしたらプロ意識高いですね。
西畑くんのマブダチがみんな朝ドラに出ているという話の流れで、藤原氏が「役者としても3人すごいし、朝ドラにも出てるし・・・」という発言をしたところです。
「朝ドラ」の「さ」をやたらに強調して発音していて、そのせいで「あっさドラ」風に聞こえたのが強く印象に残りました。
促音(ちいさい「っ」)が入って聞こえるかどうかには様々な要因が関わっている(←管理人の専門分野ど真ん中)のですが、ものすごく簡単に言ってしまうと、子音が周囲の音に比べて相対的に長いと促音に聞こえます。
今回の音声の場合、「あさ」の部分を強調して発音した結果、その前後の部分よりも「あさ」が相対的にゆっくり発音される(=各音が長めに発音される)ことになり、結果としてsの促音っぽさが上がったのだろうと推測できます。
ちなみに、子音がどのくらい長ければ促音に聞こえるのかについては個人差があります。「あっさ」と聞こえる人もいれば、そうは聞こえないという人もいるかと思いますが、個人差があるので特に問題ではありません。
後輩(キャメロン)の話の中で、藤原氏がキャメロン君に会ったときに言われた発言のモノマネをしたシーンです。
藤原氏はオリックスファンで、「バッファローズ」ではなく「バファローズ」だと口酸っぱく言い続けているというイメージがありますが、藤原氏自身の発音(↓)を聞く限り、明らかに「バッファローズ」って言ってませんか?
ついに藤原氏も「バッファローズ」を音声変異形として認めたということでしょうかね。
もしくは、「バッファローズ」と言ってても許せてしまうくらい、藤原氏にとってはキャメロン君がかわいいということなのでしょうか。
ちなみに、音声学的に言うと、buffalo は発音記号で書くと [bʌfəloʊ] となり、発音上fは一つだけです(そもそも、英語には「促音」という概念自体がありません)。
ただ、日本人にとっては、何となく「バッファローズ」のようにfの前に促音を感じるような気がしますよね。
これにはいくつか要因があります。
一つは、英語側の問題で、buffaloの場合、最初の音節(bu)にアクセントがあり、その次のfaにはアクセントがありません。
英語では、アクセントがある音節は長くはっきり発音されるのに対し、アクセントが無い音節は短くいい加減に発音されるという特徴があります。
一方、日本人の音の知覚(聞こえ方)の特徴として、子音(この場合、f)に促音を感じるかどうかには、f自体の長さ(長いほど促音を感じる)に加えて、子音の前の母音や後ろの母音の長さも関係してくるというものがあり、前の母音に関して言うと、「ある子音の直前の母音が長くなると促音を感じやすくなる」という法則があり、後ろの母音については、「ある子音の直後の母音が短くなると促音を感じやすくなる」という法則があります。
以上のことをまとめると、buffaloに関しては、英語の発音においては、bu(fの前の母音)はアクセントがあるので長く、fa(fの後の母音)はアクセントが無いので短く発音されるということになります。
これを日本人の知覚の特徴に照らして見てみると、「fの前の母音が長い」ことも、「fの後ろの母音が短い」ことも、どちらも促音の知覚を促進する要因となるので、結果としてfに促音を感じる(バッファローのように聞こえる)ということになります。
他にも色々あるんですが、長くなりすぎてしまうのと、出張に行っていてもたもたしているうちになにわTubeに次の動画がアップされてしまっているので、ここまでにしておきます。